俳優デビュー作となった『仮面ライダーリバイス』で脚光を浴び、その後も多彩な役柄で存在感を放つ俳優・椛島光さん。2024年刊行の1st写真集『chouchou』から約2年ぶりとなる2nd写真集『椛島光 2nd写真集 Ortensia』が完成した。敬愛する映画『ベニスに死す』の舞台であるイタリアのベネチア・リド島を訪れ、30歳という人生の節目を迎えた彼女の“今”を鮮やかに切り取ったメモリアルな一冊。作品に込められた思いや撮影秘話、そしてこれまでの歩みを聞いた。

憧れの映画の舞台・リド島で迎えた「30歳の瞬間」
——2年ぶりとなる2nd写真集『椛島光 2nd写真集 Ortensia』の刊行、おめでとうございます。まずは出版が決まったときの率直なお気持ちからお聞かせください。
【椛島光】ありがとうございます。今回の写真集は、私が一番大好きな映画『ベニスに死す』の舞台となった場所へ行ってみたいと、ふと呟いたところからスタートしました。企画が進んで「本当に行ける」と決まったときは、ただただうれしくて。ずっと憧れていたあの世界に自分が足を踏み入れられるんだと思うと、胸がワクワクでいっぱいになりました。
——ご自身にとって思い入れの深い場所だからこそ、早い段階から「こういうシチュエーションで撮りたい」という構想もあったのでしょうか?
【椛島光】そうですね。『ベニスに死す』の劇中に登場する象徴的なホテルやビーチには、絶対に訪れたいと思っていました。そこだけは最初から明確にイメージしていました。
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——撮影地となったリド島はベネチア国際映画祭の舞台でもあり、映画カルチャーと深く結びついた地です。俳優として、その歴史ある街の空気に溶け込むような感覚はありましたか?
【椛島光】ベネチアは「水の都」と呼ばれるとおり、移動手段も水上タクシーが当たり前で、常に水が間近にある光景がとても印象的でした。長い歴史が積み重なった街並みなのですが、不思議と私自身の肌にとてもなじむ感覚があって。流れている空気感が心地よくて、滞在中は終始リラックスして過ごすことができました。
——完成した写真を拝見すると、まるで名作映画のワンシーンを切り取ったようなカットも多く見受けられます。実際に念願の地へ降り立った瞬間は、どんな思いが去来しましたか?
【椛島光】リド島を訪れたのは今回が初めてでした。映画が公開されたのは何十年も前なのに、当時の空気感をまとった舞台がそのまま残っていることに驚きましたし、自分が実際にその場所に立ち、同じ空気を吸っているんだと実感した瞬間は本当に鳥肌が立つほど感動しました。
——現地に入ってから、撮影はすぐに始まったのでしょうか?
【椛島光】現地入りした翌日からすぐに撮影が始まりました。そして撮影の初日こそが、私がずっと行きたかったリド島でのロケだったんです。初日からテンションがいっきに上がりました。
——長年スクリーン越しに見つめてきた世界に自分が入り込むというのは、特別な体験ですね。
【椛島光】劇中のホテルは現在、中に入ることはできず外観のみの撮影だったのですが、それでも「ここで名シーンが撮られたんだ」という歴史の重みを肌で感じました。それに、実際に現地を訪れて初めて、ホテルとビーチの距離がこんなにも近かったんだという発見もありました。そして何より、砂浜を歩いた瞬間は胸に込み上げるものがありました。「(映画に登場する)あの2人はこの海を見つめ、この砂浜を歩いて撮影していたんだな」と思いをはせると、胸がいっぱいになりました。
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——そんな特別なロケーションで撮影し、さらに撮影期間中に30歳という大きな節目を迎えられたそうですね。この場所で誕生日を迎えたいという思いは、当初から意図していたのですか?
【椛島光】最初は純粋に「『ベニスに死す』の舞台に行きたい」という希望から始まったのですが、企画を詰めていく段階で、自分がもうすぐ30歳を迎えるタイミングだと気づいたんです。30歳は人生における大きなターニングポイントですし、その瞬間をリド島という大好きな場所で迎えられたらどんなにすてきだろうと思って、スタッフの皆さんに提案してみました。そうしたら「ぜひそうしよう」と賛同してくださって実現しました。一番思い入れのある場所で30歳を迎え、その瞬間を写真に残していただけるなんて、一生に一度しかない本当に贅沢でありがたい機会をいただいたなと思います。
——ご自身の感情の昂ぶりが、そのまま作品のフィルムに焼き付けられているわけですね。
【椛島光】はい。砂浜を歩いているときの表情など、感情があふれ出ている瞬間をカメラマンの細居幸次郎さんが見事にすくい取ってくださいました。細居さんとは事前に国内での撮影の機会があったので、構えることなく自然体でいられました。最後まで肩肘を張らず、ありのままの私を撮っていただけたと思います。
“何もしない”で見せた、無防備で自然体なありのままの姿

——30歳を迎えた当日は、どのように過ごされたのですか?
【椛島光】誕生日当日も朝からずっと撮影をしていたのですが、ちょうど節目の瞬間を迎えたのはジェラート屋さんでした。私は昔からジェラートが大好物で、イタリア本場のジェラートを食べることを旅の前から本当に楽しみにしていたんです。現地で30歳になって初めて口にするのが大好きなジェラートで、しかもスタッフの皆さんが「おめでとう!」と歌を歌って祝福してくださって。うれしさと楽しさでいっぱいの、これ以上ない最高な30歳の幕開けでした。
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——ということは、本作には29歳の椛島さんと、30歳を迎えた瞬間の椛島さんの両方が収められているのですね。
【椛島光】そうなんです。29歳の最後の姿、30歳を迎えたその瞬間、そして30代に踏み出した姿のすべてがグラデーションのように凝縮されています。
——ご自身の中で20代と30代の境目や、心境の変化を感じる部分はありましたか?
【椛島光】自分自身では、普段「本当に私、30歳になったのかな?」と実感が湧かない瞬間も多いんです(笑)。でも、出来上がった写真を見返してみると、「あ、ちゃんと30歳の自分になっているかもしれない」と思えるカットが随所にあって。客観的に写真を見ることで自分の変化に気づかされたというか、すごく新鮮な発見でした。
——今回の写真集に臨むにあたって、ご自身の中で掲げていたテーマはありましたか?
【椛島光】2年前の1st写真集のときは、初めての写真集ということもあって「完璧なものにしなきゃ」と自分自身でプレッシャーをかけてしまっていた部分がありました。でも今回は2ndということもあり、逆に余計なことは何も考えず、何も気負わず、心から撮影を楽しもうと決めていたんです。「何もしない、自然体でいる」ということだけをマイルールにして臨みました。
——カメラの前で過剰にポーズを作ったり、飾り立てたりしないということですね。
【椛島光】はい。細居さんとイタリアで時間をともにする中で、お互いにすごくマイペースな空気感が流れていたんです。だから私も全く緊張せずにいられましたし、細居さんが作ってくださる空気のおかげで、これほど無防備な素の自分を引き出していただけたのだと思います。
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——数あるカットの中で、特に「これぞ素の自分」と感じるお気に入りはどれでしょう?
【椛島光】やはり、誕生日の瞬間にジェラートを頬張っている写真ですね。自分で見返しても「本当にうれしそうな顔をしているな」と笑ってしまうくらい、嘘偽りのない表情をしています。素の私がそのまま写っています。
——本当においしそうに食べていらっしゃいますね。何味を召し上がったのですか?
【椛島光】撮影用にお店の方に作っていただいたあと、「好きなものを頼んでいいよ」と言っていただけたので、まずは一度に何種類まで選べるのかを確かめました(笑)。最大4種類までいけると知って、レモン、リンゴ、マンゴー、ベリーと、大好きなフルーツ系を全部盛り込んだ特大サイズのカップを注文しました。
——とてもおいしそうですね。
【椛島光】ものすごくボリューミーでした!ただ、イタリアはとても暑かったので、手にした瞬間からどんどん溶けてきてしまって(笑)。スタッフさんが慌てて拭きに来てくださったりして少し大変でしたが、ジェラートを食べている写真の私は、どれも本当に幸せそうな顔ばかりです。大好きな場所で、大好きなものを口にできて、最高の瞬間でした。
——1st写真集以来となる水着カットも収録されていますが、体作りに関してはどのような準備をされたのでしょうか?
【椛島光】イタリアへ出発する前日までは、かなりストイックに減量していました。ピラティスやジムに通って体をしっかり引き締めて。現地に着いてからは純粋に旅と撮影を楽しもうと決めていたのですが、水着撮影の直前だけは「おいしいパスタやピザを食べすぎたらお腹が出ちゃうかも……」と気になって、少しだけセーブしていました(笑)。本当はもっとたくさん食べたかったんですけど、そこは我慢しました。
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——1st写真集からの2年間で、被写体としての意識や成長を感じる部分はありましたか?
【椛島光】カメラを向けられると、人はどうしても無意識に身構えてしまうものだと思うんです。でも今回、細居さんと初日に撮影した際、「光ちゃんはいい意味で何もしないね」とおっしゃっていただいて。最初は「私、何かポーズを取らなきゃいけないのに、動かなさすぎるのかな?」と不安になったのですが、細居さんは「作為的な動きをせず、ただそこに存在してくれるのが素晴らしい」という意味で言ってくださったんです。その言葉をいただいて初めて、「私、カメラの前で気負わずにいられるようになったんだ」と気づくことができました。
——その変化は、この2年間で俳優として数々の現場を経験されたことも影響しているのでしょうか?
【椛島光】それは間違いなくあると思います。お芝居の現場では、毎回必ず緊張しますし、撮影が終わるたびに「今の表現で大丈夫だっただろうか」と自問自答を繰り返しています。そうやって役と向き合い、葛藤を重ねてきたからこそ、自分自身として立つ写真集の現場では、余計な鎧を脱ぎ捨てて素直に呼吸ができるようになったのかもしれません。
運命的な出会いから名付けた「Ortensia」と、20代でほぐれた頑固さ

——写真集のタイトル『Ortensia(オルテンシア)』は、イタリア語で「紫陽花(アジサイ)」を意味する言葉ですね。このタイトルにはどのような経緯があったのですか?
【椛島光】リド島のレストランで食事をしていたとき、通りかかった現地のイタリア人男性から、突然ピンクの紫陽花を一輪プレゼントされたんです。見ず知らずの私たちに、さらっとお花を差し出してくださって。憧れの地でそんなロマンチックな出来事が起こるなんて想像もしていなかったので、すごく心に深く残りました。写真集の中にもその紫陽花を持ったカットがいくつか登場しています。あのタイミング、あの場所だからこそ生まれた運命的な出会いでした。
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——すてきなハプニングですね。紫陽花という花自体にも、何か惹かれるものがあったのでしょうか?
【椛島光】実は紫陽花の花言葉を調べてみたら、日本では「移り気」など少しネガティブな意味合いで捉えられることもありますが、イタリアをはじめとするヨーロッパではピンクの紫陽花も多く、「家族の団欒」や「感謝」といった非常に温かくポジティブな意味を持っていることを知りました。その温かい花言葉を知ったとき、これまで私を支え、応援し続けてくださったファンの皆さんへの感謝の思いとぴったり重なったんです。もしあの日、紫陽花をいただいていなかったら、写真集のタイトルも、収録された写真の構成も全く違うものになっていたはずです。すべてが一本の糸でつながっていたような、不思議な巡り合わせを感じました。
——今作にはロングインタビューも収録されており、ご自身の幼少期から現在にいたるまでの歩みが赤裸々に語られています。その中で「20代の10年間を通じて、自分の考え方がすごく柔軟になった」というお話が印象的でした。頑なだった心がほぐれていったきっかけは何だったのでしょうか?
【椛島光】もともとの私は、ものすごく頑固な性格だったんです。一度「こうする」と決めたら絶対に曲げないし、物事を0か100かでしか捉えられない極端なタイプでした。昔の私を知る人が今の私を見たら、あまりの変化に驚くと思います。私は20歳でこの芸能界に入ったのですが、20代は文字通り「人生=仕事」というくらい、すべての時間とエネルギーを仕事に注ぎ込んできました。その過程ではうれしいことや楽しいことだけでなく、悔しいこと、悲しいこと、思い通りにいかない苦しい経験もたくさんあって。そうした壁に何度もぶつかり、いろいろな感情を味わううちに、凝り固まっていた頑固な部分が少しずつ、時間をかけてほぐれていったのだと思います。
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——つらい経験を避けるためではなく、経験を受け入れることで変わっていったのですね。
【椛島光】そうですね。「すべてを一度受け入れよう」と思えるようになったことが大きいです。起きた出来事を否定するのではなく、あるがままを受け入れたうえで、「じゃあ、ここから自分はどうしていきたいのか」を一歩引いて考えられるようになりました。その思考のシフトができたことで、生きること自体がすごく楽になりました。
——30代を迎えた今、心境としてはとても軽やかな状態にあると。
【椛島光】30歳になったからといって劇的に何かが変わったわけではありませんが、気持ちの面では圧倒的に楽になりました。20代のころに背負っていた余計な重荷が下りて、今が一番、開放的で自由でいられている実感があります。
——今の椛島さんが、ご自身のパーソナリティで一番「好きだな」と思える部分はどこですか?
【椛島光】なんだかんだ言って、最終的にはものすごくポジティブなところですね。もちろん人間ですから、自信を失ったり、ひどく落ち込んだりすることは日常茶飯事です。でも、底まで沈んだあとは「まあ、何とかなるか!大丈夫!」と持ち直して、前を向いて突き進んでいける。そのタフさとポジティブさは、自分でも気に入っていますし、その性格があったからこそ、さまざまな荒波を乗り越えて今日まで歩んでこられたのだと思っています。
30代はより開放的で自由に――広がる好奇心と未来への展望

——世間では「30代は20代よりもっと楽しくなる」とよく言われます。さらに「40代は輪をかけて楽しい」とも言われます。
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【椛島光】そうなんですね! それを聞いたら、これからの人生、楽しいことしか待っていないじゃないですか(笑)。ますます未来が楽しみになってきました。
——俳優としても、30代を迎えて表現の幅がさらに広がっていくと思います。今後、仕事やプライベートで叶えたい夢や目標はありますか?
【椛島光】私は旅行が本当に大好きなので、まだ訪れたことのない国を、自分の足で行ける限り全部回ってみたいという大きな夢があります。俳優のお仕事として海外ロケに行けるのも光栄ですし、プライベートでもバックパックを背負っていろいろな土地を旅して、現地の人たちと触れ合ってみたいです。
——憧れのリド島を制覇した今、次に最も行ってみたい場所はどこでしょう?
【椛島光】今一番やってみたいのは、エジプトでラクダに揺られながら広大な砂漠を歩くことです! 今はエジプトの歴史と壮大な景色にとても惹かれています。
——もしかすると、3rd写真集のロケ地はエジプトになるかもしれませんね。
【椛島光】かなり過酷なロケになりそうですね(笑)。でも、もし実現したら絶対におもしろい作品になると思います。体力をつけて待っています。
——最後に、写真集の発売を心待ちにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
【椛島光】私が心から愛する映画『ベニスに死す』の舞台に立てた感動、そして29歳から30歳へと移り変わる奇跡のような瞬間が、この一冊に余すところなく収められています。そしてタイトルの『Ortensia』に込めたとおり、これまで温かく見守り、背中を押し続けてくださったファンの皆さんへの心からの「ありがとう」を詰め込んだメモリアルな写真集になりました。ページをめくるたびに、私と一緒にイタリアを旅しているような温かい気持ちになっていただけたらうれしいです。飾らない今の私のすべてを、ぜひ受け取ってください。
取材・文=磯部正和
ヘア&メイク=眞舘楓(untitled.)
スタイリスト=高野夏季(HITOME)
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