1970年代のロンドンで、音楽、ファッション、アート、すべての価値観を根底から覆した伝説のパンクバンド、セックス・ピストルズ。その裏には、マネージャーの“策士”マルコム・マクラレンと、後に世界的デザイナーとなるヴィヴィアン・ウエストウッドが描いた“台本”があったのはご存知だろうか。
その台本から消された人物、初代ベーシスト・グレン・マトロックがすべてを語りつくしたドキュメンタリー映画『セックス・ピストルズ 破壊の設計図』が、2026年10月2日(金)より新宿武蔵野館ほか全国にて公開される。このたびグレン本人のオフィシャルインタビューとメッセージ映像が解禁となった。
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伝説の陰で消された創設メンバー、グレン・マトロック

1970年代後半停滞したロックシーンを真っ向から否定するように現れたパンクロックバンド、セックス・ピストルズ。テレビに出れば放送禁止用語を連発し、破壊的なライブパフォーマンスで観客を圧倒した。髪を逆立て、切り裂いたシャツに安全ピンという出で立ちは、パンクファッションとして世界中に広まった。デビューアルバム『勝手にしやがれ‼』は全世界で大ヒットを記録し、後のパンクロックの原型を作り上げる。
しかし、アルバム発売から間もなくバンドは崩壊する。最後のライブでヴォーカルのジョニー・ロットンが「だまされた気分になったことはないか?」と言い放って脱退。ベースのシド・ヴィシャスは恋人ナンシー殺害容疑の渦中に、薬物の過剰摂取により21歳の若さで死去し、その刹那的な生涯がパンクの代名詞として神話化されていく。だがその陰で、バンドの音楽を実際に作った男の名前は、長く表に出ることがなかった。
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グレン・マトロックはバンドの創設メンバーであり、『勝手にしやがれ‼』収録12曲中10曲のソングライティングに関わった中心人物だ。バンドの音楽的基盤を築いたにもかかわらず、内部の混乱とマネジメントの策略により脱退へと追い込まれている。本作ではグレンやスティーヴ・ジョーンズ(ギター)、ポール・クック(ドラム)らセックス・ピストルズのメンバーの証言に加え、過去の貴重な写真や映像を交差させながら、伝説のバンドの裏側に潜む「残酷な台本」の全貌をひもといていく。
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「わだかまりを整理したかった」自伝から映画化までの道のり

グレンは1990年に回想録『I Was a Teenage Sex Pistol』を出版している。バンドを離れた経緯への思いが、執筆の出発点だった。
「もともとこの本を書いたのは、最初にバンドを離れることになった経緯に対して自分がずっと抱えていたわだかまりを整理したいという想いからでした。書き進めるうちに、それは私にとってとても心の浄化のような体験となり、自分自身と向き合い、気持ちに区切りをつける助けになりました」
この自伝が1つの区切りとなり、1996年にはバンドへ再加入。日本公演を含むワールドツアーにも参加した。いつかこの物語を映像にしたいという想いは温めていたが、急ぐ気持ちはなかったという。数年前、監督のニック・ミードと偶然出会い、プロデューサーのアンドレ・リリスを紹介されたことで、企画が動き出した。
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「『待つ者には必ず時が来る』とよく言われますが、この作品がバンド結成50周年という節目のタイミングと重なったのは、本当に幸運な偶然だったと思っています」と振り返る。
完成した作品については「とても満足しています。一番感銘を受けたのは、制作陣の『ぜひこの作品を作りたい』という強い熱意でした。私もその流れに自然と加わり、自分なりの提案をしながら一緒に形にしていきました。その積み重ねの結果が、この作品です」と話した。
最も色眼鏡なくバンドの本質を捉えた作品に
セックス・ピストルズは、マクラレン視点の映画『ザ・グレート・ロックンロール・スウィンドル』をはじめ、さまざまな切り口で映像化されてきた。スティーヴ・ジョーンズの回想録を原作としたダニー・ボイル監督のドラマ『PISTOL』(2022年)もその一つだ。グレンはこの作品での自分の描かれ方に納得しておらず、本作にはその“語り直し”の意図もあったと認める。
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「実際、スティーヴ本人にも『君は本当に記憶力が悪い』と伝えましたし、ダニー・ボイルにも彼についての私の考えを遠慮なく、はっきりと伝えました。とはいえ、過去は変えられません。だからこそ今は、このドキュメンタリーを通して、私自身の視点からこの物語を観てもらえるようになった。それが何より大きな意味を持っていると思います」
グレン自身、本作をこれまでのピストルズ関連の映像作品のなかで「最も色眼鏡なくバンドの本質を捉えた作品」を目指して製作にあたったという。そして一番伝えたかったのは、自分ひとりの手柄ではない、ということだ。「メンバー全員が、それぞれ異なる形でバンドの成功に欠かせない役割を果たしていたということです。私たちが成功を収めることができたのは、努力や情熱、地道な積み重ねがあったからですが、それだけではありません。運にも恵まれました。そして、その幸運が巡ってきた瞬間を逃さず、全力でつかみにいったことも、大きな要因だったと思っています」
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50年を経て「最後に笑うことができた」
近年、グレンが在籍していた時期のオリジナル音源が再リリースされるなど、長く続いていた“ピストルズといえばシド・ヴィシャスの破滅”というイメージにも変化が出てきている。
「昔とは変わったように感じています。ここまでたどり着くには本当に長い年月が必要でした。そして今になって、ようやく自分が報われたというか、最後に笑うことができたような気持ちですね」
グレンは現在、フランク・カーターを迎えた新体制のセックス・ピストルズとしてライブを重ねている。「ツアーが落ち着いたら、それまで中断していたソロ活動を再開し、続きを進められることを楽しみにしています」と、今後の活動についても語った。
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あわせて解禁されたメッセージ映像では、日本のファンに向けて「本当なら俺も日本に行って、みんなに会って『ハーイ!』って言いたかったんだよ。ぜひ映画館に足を運んで、楽しんでくれよ。俺自身、かなり誇りに思ってる作品だ。エンジョイしてもらえたらうれしいよ」と呼びかけている。
ショービジネスの虚と実、そして商業主義と表現のせめぎ合いを見つめながら、「人生の本当の勝者とは何か」を問いかける本作。50年越しの逆転劇を劇場で見届けてみてはいかがだろうか。
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