販売の仕事で体験した出来事や日常で感じたことなどを漫画に描き、X(旧Twitter)やInstagramで発信しているタジマオオカ(@pu92yu)さん。店舗で働くなかで遭遇したさまざまなお客様や出来事を題材に、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)を描いた「かすはら物語」や「お客様に助けられた話」などを発表している。思わず「怖い」と感じるような場面も多く、読者からは共感の声が寄せられている。ウォーカープラスでは、「かすはら物語」をリメイクした「お客様は神様ですか?」を連載。タジマさん自身が体験したカスハラや、販売員に対する無理なクレームや言動に悩みながら対応を考え続けた日々を描いている。
【カスハラ】酔っ払い客に絡まれ、警察を助けを呼ぶも…怪我などの被害はなく「通報してはいけなかったのでは?」【作者に聞く】
「慣れているから」に感じたモヤモヤ
店頭に居座って仕事を妨害する酔っ払いの男性に恐怖を感じ、警察へ通報したタジマさん。やがて2名の警察官が到着したが、警察を呼んだ経験がなかったタジマさんは、2人で来たことや、警棒や通信機などの装備から伝わる迫力に驚いたという。
一方で、怪我や暴力などの被害がなかったことから、「通報してはいけなかったのでは」と気になってしまったそうだ。
その場にいたスタッフの水谷さんは、物陰に隠れながらタジマさんと警察官の様子を見守っていた。その後、社員に電話で状況を伝えたものの、返ってきたのは「タジマさんは慣れてるんだから任せておけばいいよ」という言葉だった。水谷さんは、現場に2人しかいないことを知ったうえでの発言に、無責任で冷たいと感じたという。タジマさん自身も、「慣れているから」という言葉には複雑な思いを抱いた。
カスハラに「慣れる」ことはない!
当時の状況を振り返ると、タジマさんが勤務年数3年以上であることや、水谷さんが新人だったこと、警察官がすでに到着していたことなどを考えれば、「タジマに任せておけ」という上司の判断そのものは理解できたという。しかし、「慣れているから」という理由にはモヤモヤが残った。
タジマさんは、同じような経験を複数回すると、自分が置かれた状況を少し冷静に見られるようになることはあると話す。ただし、それは決してカスハラに「慣れた」ということではない。「接客だけではなく、学校や職場で起こるハラスメントやいじめに『慣れる』なんて、とても悲しいことだと思います。そして慣れたところで何の解決にもなりません」
一方で、嫌なことを聞き流すために「慣れる」という考え方もあるとし、物事の捉え方は人それぞれだとタジマさん。そのため、一概には言えない難しさも感じているという。
嫌味や恫喝だけではない、セクハラへの対策
さらに、スタッフの水谷さんが別のスタッフと一緒に勤務した際、セクハラを伴うカスハラを受けたことも明らかになった。タジマさんは、それまでお客様からの迷惑行為について、嫌味や恫喝への対応を中心に考えていたという。しかし水谷さんの話を聞いたことで、カスハラだけでなくセクハラについても対応策を考える必要があると改めて認識した。
カスハラへの対応について、タジマさんが現在心掛けているのは、まず相手の話をしっかり聞くこと。ただし、相手に寄り添うのではなく、あくまでも店員と客という一線を引くことを大切にしている。「とにかくお客様の話を聞きます。現場ではやはりそれが基本になってきます」
カスハラそのものについては、「やめてほしい」というのが率直な思いだという。一方で、「カスハラをなくそう」とするだけではなく、「カスハラはある、なくならない」という前提から対策を考えることも一つの方法ではないかと語る。
カスハラに苦しむ人へ伝えたいこと
最後に、現在カスハラに苦しんでいる人へのメッセージを聞いた。嫌なことを言われたり、見下されるような扱いを受けたりして心が折れそうになったときには、自分がなぜその仕事をしているのかを思い出してほしいという。「お客様に楽しいお買い物をして喜んでもらうため、心地よい時間とよい商品を提供するために、今ここにいる。自分はとても素敵な仕事をしているんだ」と。
カスハラという理不尽な行為に悩まされても、それによって自分の仕事そのものの価値まで否定してほしくない。タジマさんの言葉には、販売員として働く人へのそんな思いが込められている。