商業雑誌だけでなく、SNSで漫画を発表し、読者と直接やりとりできるようになった昨今。そんなWebならではのスタイルで、読者と一緒に物語を作り上げていく漫画が話題を集めた。今回は、コマkoma(@watagashi4)さんの「窓拭きお兄さんが告られておじさんたちが奮闘する漫画」を紹介する。本作は、読者から寄せられるコメントをヒントに展開が変化し、「ツイバズ」に速報されるほど注目を集めた作品。予想のつかない物語が生まれた背景について、作者のコマさんに話を聞いた。
「彼女は何階だ!?」窓拭き男子に恋のチャンス!もらった電話番号が消えるトラブルに作業員のおじさん総出で大奮闘
突然の告白から始まる、窓拭きお兄さんの恋
特殊な職業である窓拭き清掃員として働く翔太。男性の多い職場で、なかなか出会いのない日々を送っていた。そんなある日、マンションの屋上から1階へ向かって窓を清掃していると、目の前に携帯番号が書かれたメモが現れる。マンションに住む女の子が、勇気を出して翔太に電話番号を伝えてきたのだ。
せっかくの電話番号が汗で消える大ピンチ!
翔太は清掃用具でガラスに「OK」と返事をすると、とっさに手の甲へ電話番号を書き写す。しかし、作業を終える頃には汗で番号が消えてしまっていた。彼女が何階に住んでいたのかも分からず、焦る翔太。そんな彼を見かねた会社の同僚や上司たちは、せっかくの出会いを無駄にさせまいと一丸となって彼女の住まいを探し始める。
展開は作者にも読めない!?読者と一緒に作る物語
4コマ漫画のようなコマ割りにカラーを施した独特のスタイルも印象的な本作。コマさんは「描き方をあんまり意識したことはないです」と話す。また、登場人物の会話についても、事前に細かく決めているわけではないという。
「会話は描いているうちにどんどん登場人物が喋ってくれるので、とくに前もって何を言わせようとは考えてはいないです」
そのため、描き進めるうちに当初考えていた展開から大きく外れてしまうことも。「3ページくらい描いたら、思ってた話からどんどん外れてたりすることがよくあります」とコマさん。そこからは読者の反応を見ながら、臨機応変に展開を考えていくのだという。
コメント欄から新たな展開や設定が生まれる
本作の設定も、実は後から決まることが多い。「設定も完全に毎回後付けです。つじつまが合わなくても『細かいことはいいんです!』と経理の山本さんに押し切らせようと思ってます(笑)」とコマさんは明かす。
その背景には、Twitterのコメント欄そのものを楽しんでいることがある。「Twitterに投稿して、即コメントが返ってくるのが楽しくて漫画を描いている感じです」と話し、読者が自身の体験や考えを交えながら投稿する引用リツイートから、次の展開を考えることもあるという。
「自分にはない視点に驚いたり、大方の予測の逆の展開を思いついたり、毎回とても楽しいです。名前なんかも丸投げしています」
読者の反応がそのまま物語の刺激になり、ときには作者自身が想定していなかった方向へ進んでいく。読者と漫画家がリアルタイムでやりとりできる、SNSならではの作品と言えるだろう。
窓拭き清掃員ならではの「OK」に込めた工夫
翔太が窓ガラスに描いた「OK」の返事にも、窓拭き清掃員ならではの工夫がある。洗剤の泡で視界が見えなくなった状態で、鏡文字の「OK」を描いているのだという。コマさんも「翔太くんにしては、粋な返事だったと思います」と振り返る。
また、男性の作業着姿を描きたかったことも、「窓拭き清掃員」という設定につながっている。「つなぎとか作業着の男性が昔から好きで…」と話すコマさん。作業着姿の人物が登場する漫画が少なく、「読みたいなーと思っていたので、自家発電という感じです」と、作品を描き始めた理由を明かした。
おじさんたちの男子高校生のような会話にも注目
翔太を取り巻く職場の男性たちは、恋を応援するだけでなく、男子高校生のようなノリで会話を繰り広げる。そのピュアでにぎやかなやりとりも本作の魅力だ。
コマさんが身近な男性たちの会話から影響を受けた部分もあるという。2歳下の弟が友達と楽しそうに話している姿を昔から面白いと感じ、そばで聞いていたそう。異性のいない男性同士の会話には独特の面白さがあり、下ネタだけではなく、政治の話や夢を語り合ったり、時には喧嘩したりする様子からも着想を得ている。
脇役の物語や別作品にも広がる世界観
「窓拭きお兄さん」の物語は、脇役にも広がっている。作中に登場する独身者の三宅さんを主人公にした続編もTwitterで描かれており、その先の展開については「どうなるかは全く考えていません(笑)!!」とのこと。
このほか、「軍人婿さんと大根嫁さん」の同人誌をKindleとBOOTHで発売。LINEマンガでは縦読みコミック「雨の日と月曜日」を連載し、連載終了後には続編の短期集中連載も予定しているという。
おじさんたちの奮闘に読者も爆笑
マンションの構造から彼女の住まいを推測し、翔太の恋を全力で応援する職場のおじさんたち。その奮闘ぶりやテンポのいい会話に、読者からは「何回読んでも爆笑する」「社員思いの職場が好きすぎる」といった声が寄せられている。
作者と読者がリアルタイムでやりとりしながら、思いもよらない方向へ進んでいく「窓拭きお兄さんが告られておじさんたちが奮闘する漫画」。恋の行方だけでなく、翔太を応援するおじさんたちの活躍にも注目したい。
■取材協力:コマkoma(@watagashi4)
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