依頼料の肩代わりと、先輩からの厳しい指摘
ある天気のよい日、宮野は先輩スタッフのデンゾウと浜辺に座り、依頼者である大崎さんの依頼料を自分が肩代わりしたことを打ち明けた。デンゾウならきっと、自分の気持ちを理解して優しい言葉をかけてくれると期待していたのだ。
デンゾウは「かわいそうに。ほんま気の毒やったな」と声を掛けたが、突然「大崎親子の名前、なんやったっけ?」「母親の出身地は?」と次々に素性を質問してくる。「そんなの知るわけないじゃないですか」と正直に答える宮野に、デンゾウは「金を貸すなら知ってて当たり前のことばっかりや」と諭す。「あの依頼者も悪いけど、君にも非がある」。その言葉に、宮野はすっかり落ち込んでしまうのだった。
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全てを失った投資詐欺と「2億円の借金」
そしてデンゾウは、「僕はな、3年前社長に夜逃げさせてもらった人間や」と自身の壮絶な過去を打ち明け始める。かつて故郷の関西でさまざまな事業を展開するもすべて失敗し、借金は2億円に上ったという。
「僕には経営者としての才能も運もなかった」と語るデンゾウ。当時、オーストラリアでの都市開発という架空の投資話を信じ込み、わらにもすがる思いで全財産を注ぎ込んでしまったのだ。会社は倒産し、自己破産。自ら命を絶とうと思ったとき、夜逃げ屋の存在を知った。
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「借金で夜逃げ言うより、僕のことを知らん場所へ行きたかったんや」。夜逃げ後、職探しに困っていたデンゾウを、社長はスタッフとして迎え入れてくれた。彼は今でも社長に深く感謝しているという。
恐怖から安心へ変わる瞬間が「やりがい」
現在も夜逃げ屋のスタッフとして活動を続ける宮野シンイチさんに、この仕事のやりがいについて聞いた。
夜逃げ屋に対しては「裏稼業なので怖いイメージはかなりあった」と振り返る宮野さん。しかし、実際に働くなかで実感することもあるという。「夜逃げする直前は、皆さん恐怖や緊張で心ここにあらずの状態。会話の受け答えもままならない方がたくさんいます。でも、夜逃げが終わると心から安心した表情になってくれる。その時はやりがいを感じますね」と語ってくれた。
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