「私に弟がいた!!」——。主人公の恵(めぐむ)は、家の押し入れで1枚の古びた写真を見つける。そこには離婚した父と母、幼い自分、そして見覚えのない弟の姿があった。写真の裏に記された住所を頼りに弟を訪ねた恵だったが、再会の先には想像を超える現実が待っていた。離れて暮らしていた姉弟の物語「毒のこども」を紹介するとともに、作者の墨染清(@sumizomesei)さんに制作について聞いた。
「私に弟がいた!!」離れ離れの姉弟が再会!弟の意外な想いに姉の辛い記憶が蘇る…ラストシーンに読者感動
写真の中にいた「弟」
弟の存在を知った恵は、友達に付き添ってもらい、写真の裏に書かれていた住所を訪ねる。しかし、たどり着いたアパートの一室はごみが散乱し、異様な空気に包まれていた。ドアを開けたのは、学校にも通っていないような、やせ細った弟だった。部屋の奥には、だるそうに横たわる女性の姿もある。
目の前の光景に言葉を失った恵に、友達は「やばいって、ちょっと…帰ろう。これは無理」と帰宅を促す。それでも恵はその場を離れられなかった。「弟…かわいかった」と涙を流す彼女は、今ここで帰ってしまえば、もう二度と自分を“お姉ちゃん”だと名乗れないような気がしていた。
忘却ではなく回避だった
本作「毒のこども」を描いたのは、2017年冬期のゲッサン新人賞(小学館)、2021年5月期の新世代サンデー賞(小学館)で佳作を受賞するなど、数々の作品を発表してきた漫画家・墨染清さんだ。
恵は弟について友達から尋ねられた際、「さっぱり覚えてない」と笑っていた。しかし墨染さんによると、恵は弟の存在そのものを忘れていたわけではないという。「弟の記憶=自分の負の歴史の象徴」だったため、普段は明るくふるまう彼女にとって、その記憶に触れることは避けたいものだった。「誰かに話すことも、自分で思い出すことも避けていたのです」と墨染さんは明かす。写真との出会いは、恵が封じ込めていた過去と再び向き合う瞬間でもあった。
なぜ埼玉が舞台?
墨染さんの作品は、本作を含めて埼玉県を舞台にしたものが多いという。理由を尋ねると、「埼玉県が好きだからです。一度も訪れたことがないのに、なぜか惹かれるものがあります」と語る。東京ほど人が多すぎず、かといって田舎でもない。適度なにぎわいと穏やかな空気が共存しているようなイメージが、自身の描きたい世界観と重なるのだという。「いつか必ず埼玉県を訪れて、本場の空気を味わいたいと思っています!」と、その思いを明かした。
姉弟はどうなっていく?
「いい話でした」「ただ一言お姉ちゃんに『よく頑張ったね』って言ってあげたい」といった声が寄せられた。ラストのケーキにまつわる場面にも、多くの読者がさまざまな思いを重ねている。再会した姉弟がどのように互いと向き合っていくのか。恵の“お姉ちゃん”としての思いを、最後まで見届けてほしい。
取材協力:墨染清(@sumizomesei)
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