仕事に真面目で、浪費もせず、妻に合わせてくれる。一見すると理想の夫に思えるが、感情を共有できず、すべてを一人で抱え込まなければならない生活は、想像以上に孤独だった。実体験をもとにしたコミックエッセイ『夫と心が通わない カサンドラ症候群で笑えなくなった私が離婚するまでの話』の原案を手掛けたアゴ山(@agoyama.okane)さんに、作品へ込めた思いや夫婦との向き合い方について聞いた。
“理想の夫”のはずだった…文句も言わない、浪費もしない、でも言葉が通じない「宇宙人と話してるみたい」悩んだ女性の離婚劇【作者に聞く】
「独りじゃない」と伝えたかった
本作は、夫との意思疎通がうまくいかず苦しんだアゴ山さん自身の体験がベースになっている。結婚前は穏やかな「仏のような人」だと思っていた夫だったが、一緒に暮らすうちに「宇宙人と話しているかのような」感覚を抱くようになり、やがてカサンドラ症候群と呼ばれる状態に陥ったという。
漫画を描き始めたきっかけについては、「離婚やカサンドラで辛かったことを誰かに聞いてほしい気持ちが強く、どうにか発信したいと思いX(旧Twitter)を始めました」と振り返る。その後、鳥頭ゆばさんとの交流をきっかけに作画協力が実現し、「あのとき勇気を出して声をかけて本当によかったと思っています」と語った。
悩む人の支えになる作品を目指して
書籍化にあたっては、SNSで公開していた内容を一つの作品として再構成することに苦労したという。また、「発達障害にかかわる話は、どんなに気を付けても傷つく人や批判する人は出てくると思っていたので、できる限り言葉遣いなどに気を付けて制作しました」と明かす。
さらに、専門カウンセラーにも夫婦関係について相談しながら制作を進めたそうで、「私のように悩んでいる方にとって救われるような内容を収録できたかと思います」と話した。
漫画を描いたことで見えたもの
作品を発信したことで、「同じように悩み苦しんでいる」という読者から数多くのDMやコメントが届いたという。「共感してくれる人がたくさんいるということは、それだけで心が救われます」と語り、「漫画を制作して客観的に自分や夫婦の在り方を考えることができた」と心境の変化も明かした。
また、夫とは学生時代のアルバイト先で知り合い、社会人になって再会したことをきっかけに交際へ発展。友人たちの間では「天然でおもしろいキャラクター」として親しまれていたという。一方で、仕事の愚痴や苦労話を一切しない人だったため、「最初は愚痴を言わないタイプなんだなと尊敬していました」と振り返った。
同じ悩みを抱える人へのメッセージ
現在は離婚し、養育費も取り決めどおり支払われているという。子どもとの面会も続いているが、上の子は父親に苦手意識があり、下の子を中心に会っている状況だと明かした。
最後にアゴ山さんは、「私は離婚という選択をしましたが、相手の特性を理解しながら結婚生活を続けている夫婦もたくさんいます」と前置きしたうえで、「配偶者の特性をきちんと理解してあげることが大事。同じように悩んだら、『独りじゃないよ』と知ってほしいし、周りにも相談してほしい」とメッセージを送った。
カサンドラ症候群という言葉を知ったことで、自分と同じ悩みを抱える人がいることを知り、「全てが腑に落ち、何かが浄化されたような感覚だった」というアゴ山さん。パートナーとの関係に悩む人にとって、自分の状況を知ることが前へ進む第一歩になるのかもしれない。
■取材協力:アゴ山
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