「夫としてはよさそう」。そんな打算的な理由で結婚したハルは、夫の転勤で大阪へ移り住み、知り合いもいない土地で孤独な毎日を送っていた。やがてパート先で夫とは正反対の価値観を持つ大学院生と出会い、少しずつ心が揺れ始める――。ただっち(@tadatsuchi5555)さんが描く『夫がいても誰かを好きになっていいですか?』について、作品に込めた思いを聞いた。
「夫としてはよさそう」妥協で選んだ結婚…その後、運命の人に出会ってしまった!?夫への不満と運命の恋…妻の葛藤を描く【作者に聞く】
孤独な結婚生活が生んだ心の隙間
結婚から3年。夫の転勤で大阪へ引っ越したハルは、知人もいない土地で夫との時間だけを頼りに暮らしていた。しかし、夫婦は1年以上レスの状態が続き、結婚記念日のすれ違いをきっかけに距離は広がるばかり。休日の過ごし方を巡る口論では、「オレありきで遊ぶことを考えてるのやめなよ。ハルも自分の世界を見つけなって」と言われ、その言葉をきっかけにパートへ出ることを決意する。
久しぶりの仕事に充実感を覚える一方で、夫からは「オレはハルと違って一日中働いてるんだよ。ちょっとは気遣ってほしいな」と冷たく言われてしまう。「たくさん稼いでるほうに気を遣わなきゃいけないのか」と感じたハルは、家政婦のような結婚生活に疑問を抱くようになる。
やがて、パート先で出会った大学院生・後藤と距離を縮めていくハル。ぶっきらぼうながら思いやりのある後藤は、夫とは正反対の存在だった。惹かれていく気持ちを自覚しながらも、自分が既婚者であることを打ち明けられずにいた。
描きたかったのは「不倫」ではなく人間の葛藤
本作は、KADOKAWAの編集者から「不倫をテーマにした漫画を描いてみませんか」と声をかけられたことがきっかけで誕生したという。ただっちさんは、「『夫がいても誰かを好きになっていいですか?』というタイトルを先にいただいて、正直かなりドキッとしました(笑)」と振り返る。
そのうえで、「不倫を肯定したいわけではなく、人間の弱さ、心が揺らぐ瞬間を素直に描きたい気持ちのほうが強かったです」とコメント。「その矛盾や葛藤の中で、本人は何を考えているのか、どんな言い訳をしているのか。そういう部分こそがすごく人間らしくて、物語としておもしろくなるんじゃないかな、と思いながら描きました」と制作への思いを語った。
恋心と罪悪感、その揺れ動きを丁寧に
制作で特に力を入れた点については、「罪悪感を抱きつつも、本能で『きゅぅうん』となってしまうようなときめきの描写」と説明。恋心が深まるほど夫の欠点ばかりが目につく心理についても、「不倫相手は美化モード、夫は欠点探しモードのフィルターがかかっているようなもの」と表現し、「非常に身勝手ですが、こういうところがまさに人間だと思います」と話す。
また、「相手の好意が薄らわかりつつも、聞かれなければ既婚者だと言えない」という曖昧な心理にも注目してほしいという。「悪意というより、『今の関係を壊したくない』『嫌われたくない』という弱さの延長線上にある選択」だからこそ、少しずつ取り返しのつかない状況へ進んでしまう過程を描いた。
読む人によって変わる受け止め方
読者からは「絶対あり得ない」「わからなくもない」「すごくわかる」など、さまざまな感想が寄せられているという。ただっちさんは、「読む人の立場や経験、そのときの気持ちによって受け取り方が大きく変わるのが印象的でした」と話し、「自分はどこにイラッとしたのか、どんな気持ちになったのかを意識しながら読んでほしい」とメッセージを送った。
『夫がいても誰かを好きになっていいですか?』は、不倫の是非を描くだけではなく、人の弱さや葛藤を丁寧にすくい上げた作品。読後、自分ならどうするのかを思わず考えさせられる一作となっている。
■取材協力:ただっち(@tadatsuchi5555)
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