サッカー日本代表のシンボルの1つが、SAMURAI BLUEを象徴するジャパンブルーのユニフォーム。大会ごとにそのデザインに注目が集まるが、今年6月に開幕した「FIFAワールドカップ2026」のユニフォームには、ホーム・アウェイでつながりのあるストーリーテリングを描きながらもそれぞれに異なるコンセプトを設定し、アディダスのロゴも使い分けるといった新たな試みが取り入れられている。ホームユニフォームは前回大会の約2倍の売れ行き、アウェイユニフォームはなんと約29倍の売れ行きで、サッカーファン以外からも大きな注目を集めている。

1999年から日本代表のユニフォームを手掛けるアディダスは、今回のウェアにどんな思いを込めたのか。アディダス ジャパン マーケティング事業本部シニアマネージャーの高橋慶多(※高は正しくははしごだか)さんの話から、プロダクトについて、そして「サッカーを日本の深いカルチャーへ」というデザインの背景にあるブランドストーリーまでを探る。
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ホーム・アウェイで異なるコンセプトと1995年以来の「トレフォイル」ロゴを採用。挑戦的な2026ユニフォーム
――はじめに、アディダスがサッカー日本代表のユニフォームを公式に手掛けることになった当時の背景を教えてください。
アディダスは1999年から日本サッカー協会とのパートナーシップをスタートしました。日本がワールドカップの出場権を初めて獲得した1998年当時、代表ユニフォームは複数のブランドによる持ち回りでの提供でした。1998年のワールドカップのあと、アディダスというブランドの根幹にある競技であるサッカーを軸に、アディダスが持っているノウハウで日本サッカーに貢献していきたい、そしてサッカーの価値というものを共に作っていきたい。またアディダスブランドとしても日本国内で成長をしていきたい。こうした考えからパートナーシップがはじまりました。

――日本代表が活躍する中で、ユニフォームへの注目度も年々増していると感じます。今回の代表ユニフォームのポイントはなんでしょうか?
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これまでの代表ユニフォームは、ホーム・アウェイに共通のコンセプトを持たせ、デザインをそれぞれ施すアプローチが多かったのですが、今回は日本代表が掲げる「最高の景色を2026」と共鳴するように、ホームユニフォームは「HORIZON(水平線)」、アウェイは「COLORS」と、それぞれ異なるコンセプトを打ち出しました。
――それぞれのユニフォームについて詳しく教えてください。
ホームユニフォームは、日本代表を象徴するジャパンブルーの青を入れつつ、ユニフォーム中央に水平線のグラフィックを入れています。

水平線のその先にあるものは見えないじゃないですか。日本は島国なので、海の向こうに広がる世界を見に行くことはとても勇気が要りますよね。勇気を出して水平線のその先にある未知の世界に挑んでいく――そのイメージが、今の代表チームが目指すワールドカップ優勝やその先の景色と非常に親和性があることから、HORIZON(水平線)というコンセプトとデザインになりました。

一方のアウェイユニフォームは、水平線の先に描ける景色は無限大であることを表現しようと、COLORSというコンセプトになりました。
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オフホワイトのベースはまっさらなキャンバスで、そこに思い思いの色が広がっていく様子を11色のストライプで表現しています。よく見ていただくと、ストライプはところどころ途切れているのがわかると思います。これは、ピッチに立つ選手11人と彼らを応援するサポーターやファンが、1人ではたとえ不完全であっても、1つになったときにエネルギーを発揮することができる、という思いを込めています。森保一監督が掲げる“日本一丸”というスローガンにもつながるデザインです。

――アディダス全体として、ドイツやアルゼンチンの代表ユニフォームも手掛けています。グローバルなコンセプトや、各国ごとのコンセプトはあるのでしょうか?
今回のワールドカップに向けて、アディダス全体のコンセプトの1つに「LIBRE(リブレ)」というキーワードがありました。
ラテン系の言葉で、“さまざまな制約から解き放たれて初めて得ることができる自由”を意味するワードです。なので、今回のユニフォームのプロダクトもそうですし、プロモーションに関しても前回大会よりも各マーケットが自由に動いています。
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実は、ユニフォームのコンセプトをここまで深く作っているのは日本くらいで、あまりほかの国では見られないです。日本代表ユニフォームはほかに比べて、プロダクトのストーリーテリングをより深く設計しているかなと思います。
――反響の大きいアウェイユニフォームは、アディダスのロゴがホームユニフォームとは違いますよね。
アウェイユニフォームでは、スリーバーロゴではなく、月桂樹の冠をモチーフにした三つ葉の形の「トレフォイルロゴ」を採用しました。日本代表のユニフォームでトレフォイルを用いるのは1995年以来なので、多くの方が今回初めて見たんじゃないかなと思います。

日頃、トレフォイルロゴを一般消費者の方が見る機会として多いのはスニーカーや日常的に着用するアパレルです。そのロゴを使ったことによって、日本代表を応援するウェアであるとともに日常的にも着用できるウェアというイメージが醸成されて、今これほどの大きな反響につながったのかなと思っています。
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アディダスの“カルチャー”の象徴が、競技シーンに舞い戻った理由
――「スリーバー」と「トレフォイル」はそれぞれ、アディダスにおいてどのような使われ方をされているんでしょうか?
スリーバーはもともと、革のシューズが伸びて履き心地が変わらないよう靴に取り付けた三本線に由来します。ロゴは三本線が山を登っていくような形になっていて、勝利を目指すという表現が込められています。

トレフォイルは三つ葉という意味で、1972年から使われているロゴです。古代スポーツで勝者に授けられた月桂樹の冠をモチーフにしたもので、かつて代表ユニフォームにこのロゴが使われた1995年当時は、アディダスというブランドを象徴するロゴでもありました。

その後、アディダスフットボールをはじめとする競技系カテゴリーから出す商品に関してはスリーバーを、アディダスオリジナルスから出すライフスタイル・カルチャー寄りのアイテムにはトレフォイルのロゴ、と使い分けるようになりました。
ただ、ここ数年は、その垣根をなくす動きがあります。特に今回のワールドカップにおいては、アディダスがスポーツブランドであることだけではなく、そのスポーツを通して生まれてきたカルチャーもしっかり表現をしていこう、という考え方が前提にあるんです。2つのロゴを併用しているのは、アディダスがカルチャーブランドでもあるところを全面的に打ち出していく方針に基づいています。
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――カルチャーブランドという点では、ユニフォームソングにAdoさんを起用する試みもイメージの出し方としてわかりやすいですね。
アディダスと音楽シーンの結びつきは歴史的にも強いですし、スポーツと音楽も実は近い距離にあるんです。サッカーにおいても歴代ワールドカップでさまざまなテーマソングが作られてきましたよね。
サッカーを1つの競技としてアプローチするだけではどうしても限定的になってしまって、日本でこれ以上に間口を広くするのはなかなか難しい。そこで、日本に既にあるカルチャーとサッカーの接点を上手に作ることができれば、日本により深くサッカーを根付かせることにつながっていくだろうと考えました。
今回のユニフォームのプロモーションに関しても、そのような狙いで、歌い手のAdoさんにパートナーとしてオファーしたんです。

――「ユニフォームソング」というアイデアそのものも斬新でした。
今回のプロモーションでは、日本代表を応援するサポーターたちはもちろん大切にしつつ、「何かおもしろそうなことをやっている」と思ってくれる方々をメインターゲットに置いたんです。
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そこで、ユニフォームに込めた思いを聴覚的にアプローチしたら興味を持ってもらえるのでは、という発想から、これまでトライしたことのない“ユニフォームソング”の制作にいたりました。
僕がプロモーションを考えるときに大切にしているのが「クエスチョンをいかに多く作れるか」という点で。「ユニフォームソングって何!?」 という驚きとクエスチョンを持ってくれた方々に対して、納得する答えまで導くことができたら、ユニフォームにおいても新しい価値観を作れると思ったんです。

Adoさんを起用したのは、Adoさんご自身がグラミー賞を取ることを公言していて、Apple Musicチャートで全世界1位をとったこともある方だからでした。日本代表が掲げるワールドカップ優勝というビジョンと、Adoさんが体現する世界に挑んでいく姿勢が合致したのが大きかったです。
「唯一無二」の代表ユニフォームを原動力に「サッカーを深い文化へ」
――日本代表ユニフォームに込められた思い、それを伝播するためのアプローチともに、アディダスらしさを感じられました。アディダスは将来的に、日本のサッカーカルチャーにどのような変化や影響を与えていきたいと考えているのでしょうか?
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2022年ワールドカップでも今回大会でも、アディダスは、サッカーを日本の中で深い文化にしていきたいと考えてきました。そのためには、“文化が根付く”とは一体どんな光景なのか、を思い描いて言語化する必要があります。
今回のワールドカップでアディダスが仕掛けるプロモーションでは、普段の生活の中にサッカーの情報が自然と入ってくるような状態を作れたら、今後カルチャーとなっていくうえで一歩先に進むことができたと言えるのでは、と想像しました。
そうした戦略のうえで、Adoさんとのユニフォームソングや、昨年11月のユニフォーム発表時に久保建英選手のビッグモニュメントを渋谷109の隣に設置する企画が実現したんです。

スポーツブランド・メーカーとして、新製品がどれくらい売れるかは重要ですが、サッカー日本代表のユニフォームは唯一無二、競合他社から出るようなものではありません。
なので単なる新製品の発表ではなくて、発表自体をエンターテインメントにしたいな、と考えてきました。“どうすれば喜びを与えられるか”“どんな話題なら人に伝えたくなるか”と考えたこれまでの取り組みの結果として、社会現象といっても過言ではないアウェイユニフォームの爆発的な人気にもつながったのだと思います。
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――スポーツシーンにおいても、ライフスタイルシーンにおいても、アディダスは今後もさまざまなアイテムを発表していくと思います。ブランドとしてどのようなメッセージを届けていくか、展望を教えてください。
アディダスが掲げている「スポーツを通して、私たちには人々の人生を変える力がある」という理念を持って、我々は事業を展開しています。
ですので、国内外で大きなスポーツ大会があれば、アディダスが発信する情報に触れることによって、生活がよりポジティブになるようなきっかけを与えることができればうれしいです。
これからもよりよいプロダクトを出して、アスリートたちのパフォーマンスをサポートすることはもちろん、スポーツを「見る」「支える」方々の人生もより豊かにできるよう取り組んでいきたいと思います。
取材=澤田麻依、国分洋平
撮影・文=国分洋平
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