
あなたならどちらを選ぶだろうか。このままあと50年生きるのと、この先の幸せを全部つめこんで50歳まで生きるのと。



世間ではある都市伝説がまことしやかにささやかれていた。深夜3時33分ちょうどにテレビをつけると黒服の男が現れ、「このまま50年生きるのと、この先の幸せを全部つめこんで50歳まで生きるのと、どちらを選びますか」と聞いてくるというものだ。テレビのワイドショーでも特集が組まれるほど話題になっていた。
そんな番組をすさんだ目で見つめる女性がいた。髪も服もヨレヨレで生気のない表情を浮かべる夏美(36歳)だ。彼女は母親と2人暮らしだが、認知症の母は夏美のことを「陽子さん」と呼ぶ。「いじわるしないでぇ。陽子さん」と、深夜に徘徊を繰り返す母を布団に寝かしつけながら、「…だから私は夏美だってば。お母さん」とつぶやく彼女の小さな悲鳴は、誰にも届かない。そんな過酷な日常を送る夏美に、都市伝説と思われていた出来事が起こる。果たして、彼女が手にした選択とは。