全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東エリアは、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。
東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。焙煎士や店主たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

第23回は東京都目黒区にある「Switch Coffee Tokyo - Meguro(スイッチ コーヒー トーキョー メグロ)」。ここは目黒の住宅街にあるスペシャルティコーヒーの専門店だ。オーナー兼バリスタの大西さんは東京、オーストラリア、福岡と各地の名店で腕を磨いた人物。それぞれの場所や店で学んだ技術や知識、肌で感じた文化から辿り着いた“日常に寄り添うコーヒーショップ”を目指し、営業を続けている。
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店には多くの常連が訪れ、各々が生活の一部として親しむ存在。ここは街に根付いた“いつもの店”という表現がよく似合う。今回はコーヒーと出合い、世界を巡った大西さんの歩み、そして店主が目指す店のあり方について聞いてみた。

Profile|大西正紘(おおにし・まさひろ)
1986年、愛知県生まれ。慶應義塾大学在学中のアルバイトをきっかけにコーヒーの世界へ。東京の人気店で経験を積み、大学卒業後はオーストラリアのメルボルンへ渡航。現地ならではのコーヒー文化に触れながら、カフェに勤務し、さらに技術を向上させた。帰国後はカッピングや焙煎の技術、知識を深めるため、「ハニー珈琲」(福岡)に勤める。2013年に「Switch Coffee Tokyo - Meguro」を開業し、現在は目黒と代々木八幡に2店舗を展開している。
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人生を変えたコーヒーとの出合い

大西さんがコーヒーの世界に足を踏み入れるきっかけは、大学在学中にアルバイトで入ったカフェだった。
「アルバイト先で飲んだカフェラテがおいしくて、今までに飲んだカフェラテとはまったく別物でしたね。それまでは『飲み物のひとつ』として何気なく飲んでいたコーヒーに衝撃を受けたと同時に、『こんなにおもしろいんだ』と思ったんです。それからはもう夢中で、在学中は渋谷のカフェにも勤めて、いろいろと勉強しました。またコーヒーの楽しさを知っていくなかで、コーヒーを取り巻く文化そのものにも興味が湧いて、アルバイト代を貯めてアメリカへ“コーヒー旅”にも行きました」

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コーヒーへの興味は尽きず、世界的にも知られたコーヒー文化が根付く街、アメリカ・シアトルやポートランドに向かった大西さん。
「2000年代初頭、当時の日本はスペシャルティコーヒーが広く認知される前の時代でした。そのころのアメリカでは既に独立系ロースターやカフェが数多く存在していて、独自の哲学を持ちながら営業していたんです。そんな文化に触れる意味もあって、大手のチェーン店ではなく、小さなロースターや地域密着型のカフェばかり巡っていましたね。『暮らしの一部』という現地の文化が強く印象に残っていて、コーヒーに対する思いをさらに強くしてくれました」

大学卒業後はオーストラリア・メルボルンへと渡り、現地のカフェに勤務。メルボルンと言えば街のいたるところにカフェがあり、人々の暮らしにコーヒーが深く根付いた場所。そんな“聖地”の文化を体感するとともに、大西さんは「コーヒーがどのくらい好きなのかを試したかった」と語る。
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「実際に働きはじめて驚いたのは、その提供数。1日に300杯を超えるのは当たり前で、日本とは比べものにならないほどの注文が入るんです。そこで求められるのはスピードと安定感。どんなに忙しくても、お客さんの細かい要望に応えながら品質を保つことが重視され、その点の技術はかなり鍛えられました。そんな日々が苦になる人もいるかもしれませんが、私自身、その忙しい環境すら楽しめていた。だからこそ、コーヒーを続けていく自信につながりました」

「メルボルンで過ごすこと約1年。現地の文化に触れ、技術面では主にエスプレッソ、ミルクビバレッジを学びました。一方で焙煎やカッピング、生豆の見極め方について、さらに学ぶ余地があると感じ、帰国後は福岡の名店『ハニー珈琲』で働かせてもらいました。約2年勤務しましたが、日本で指折りのロースターで学べたことは大きく、スペシャルティコーヒーの本質に向き合えた貴重な期間でした。ほかにも海外とは異なる日本でのコーヒーショップのあり方、スペシャルティコーヒーの価値をどう伝えるかなど、あらゆることを知れました」
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東京でコーヒーに出合い、アメリカやオーストラリアで見た文化、福岡でさらに磨きをかけた技術。そのすべてが今のスタイルにつながっている。「ハニー珈琲」を経て、帰京した大西さんは2013年、27歳で独立。同年10月に「Switch Coffee Tokyo - Meguro」を開業した。
日常に溶け込むコーヒーショップを目指して

店づくりで目指したのは「コーヒー好きだけの店」にしないこと。コーヒーに詳しくなくても、何気なく入っておいしいコーヒーを楽しんでもらえたら。そんな思いもあって、目黒の大通りから少し離れた住宅街に店を構えている。人々が行き交う、日常のど真ん中だ。

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「豆は品質が高くクリーンカップであることは大前提。そのうえですっと口になじんで『飲み疲れない』ものを出すようにしています。たとえば酸味や苦味が強いのも個性ですが、私自身、それよりもバランスのよさ、飲みやすい優しい風味を重視しています。コーヒーはまず飲み物ですから、おいしく飲めることが大事。極端に味が強すぎると違和感のように感じてしまうんです」

大西さんセレクトの豆は常時約5種類あり、内容は時季によってさまざま。焙煎機「プロバット」の5キロ釜を使い、自家焙煎を行っている。
焙煎においては焦がさない、生焼けにしないといった基本を忠実に守る。そしてよい豆を、きちんとおいしく飲める状態に整えることを大切にしている。こだわりの豆からは自然で心地よい味わいが広がり、多くの人が受け入れやすいコーヒーが生み出される。
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日本、海外で多くの経験を積んできた大西さんの集大成といえる「Switch Coffee Tokyo - Meguro」。その先でたどり着いた答えは実にシンプル。特別ではなく、生活の一部として自然と足が向くような場所。これこそが大西さんが考えるコーヒーの存在価値だと感じた。
そのコーヒーは今日も変わらず、人々の日常に静かに寄り添い続けている。

【大西さんレコメンドのコーヒーショップは「KOSS COFFEE)」】
「東京都大田区にある『KOSS COFFEE(コス コーヒー)』。店主はオーストラリア・シドニーなどで修業した後、うちのお店でも活躍してくれた人物です。人に緊張感を与えない、柔和な人柄が魅力。彼がつくり出す穏やかな空間は、“通いたくなる”お店づくりのポイントになっていると思います。ぜひおいしいコーヒーとともに楽しんでみてください」(大西さん)
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【「Switch Coffee Tokyo - Meguro」のコーヒーデータ】
●焙煎機/プロバット 5キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60)、エスプレッソ(マルゾッコ)
●焙煎度合い/浅煎り
●テイクアウト/あり(600円〜)
●豆の販売/200グラム2300円〜
取材・文/GAKU(のららいと)
撮影/大野博之(FAKE.)
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