
自身の難聴や子宮内膜症の体験をコミカルに描いてきたキクチさん(kkc_ayn)。親の介護と看取りをテーマにしたコミックエッセイ「20代、親を看取る。」は書籍化もされ、多くの共感を集めた。現在連載中の「父が全裸で倒れてた。」では、今度は病に倒れた父との日々が描かれている。
父の状態の悪さを突きつけられた手術説明



今回描かれるのは、父の腫瘍検査のための手術を前にしたエピソードである。治療ではなく、病気の原因を調べるための手術。しかし医師から説明を受けるうちに、キクチさんは父の状態が想像以上に深刻であることを実感していく。
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「『この状態じゃなければ本来リスクはほとんどない手術なんですけど…』と言われるたびに、父の状態の悪さを思い知らされました」と振り返る。
通常なら選択できる方法が使えず、“死なないための代替手段”ばかり提示される状況に、「延命措置の確認をしたとき以上に、“父が死ぬ可能性”をリアルに感じた」と明かした。
“せん妄”だとわかっていても
手術前、父に会いに行ったキクチさん。しかし父は、まだせん妄状態が続いており、会話も支離滅裂だった。それだけならまだ耐えられたという。しかし父は、看護師には感謝を示す一方で、キクチさんには不満げな態度を見せた。
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「私なりに必死に頑張っているのに、看護師さんだけ褒められたのが本当に傷つきました」と本音を吐露。「“短パン”という言葉を、わざと聞き取りにくく発音して試している感じもして、正直めちゃくちゃムカつきました(笑)」と苦笑交じりに語った。
“意地悪な別人”と向き合う消耗
キクチさんは、「完全に支離滅裂なら『仕方ない』と思える」と話す。しかし、せん妄によって“意地悪な別人”のようになっている状態は、中途半端にコミュニケーションが取れるぶん、余計につらいという。「まともに張り合うと、心の消耗が激しくなります」と当時を振り返った。
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病院では必死に冷静を保っていたが、自宅へ戻ると一人で号泣したという。「“せん妄だから仕方ない”と思う気持ちと、“どうして私の苦労をわかってくれないの?”という気持ちの間で揺れていました」と胸の内を明かした。
“一人だったこと”が何よりつらかった
本当は病院でも涙があふれそうだったというキクチさん。しかし、「年下の看護師さんの前で泣くのが恥ずかしくて耐えました」と振り返る。また、「今思えば、せん妄状態の父に無理して会わなくてもよかったのかもしれない」と考える一方で、「もしかしたら最期になる可能性もあったので、会ったこと自体は間違っていなかったと思います」と語った。
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そして、何より苦しかったのは「帰宅しても一人だったこと」だという。
「もし夫がそばにいて、『お義父さんムカつくなぁ!』って一緒に怒ってくれたら、この悲しみも半分くらいになっていたと思います」
介護の現実は、きれいごとだけでは語れない。怒り、悲しみ、罪悪感――さまざまな感情が入り混じる中、それでも前を向こうとするキクチさんの姿が胸を打つエピソードとなっている。
取材協力:キクチ(@kkc_ayn)
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