
朝早く起きて作ってくれた弁当を、いつも当たり前のように残していた。反抗期の息子が母にぶつけた「無理してまで作れなんて誰が頼んだよ」という言葉。その日が、母との最後の会話になるとも知らずに――。2026年5月現在、SNSで「過去一番泣いた」「涙腺が崩壊した」と1.8万超の「いいね」を集めているのが、吉良いと(@kilightit)さんの漫画『幽霊が視(み)える葬儀屋さんと閉じられた弁当箱』だ。
物語の主人公・ヒロトは、母の突然の死を受け、烏丸葬儀社の烏丸枢(からすま・くるる)に立ち直れない胸の内を明かす。自分は母の愛を無下にしてきた、悲しむ資格さえない……。絶望する彼に、烏丸は弁当に入り続けていた「唐揚げ」の真実を告げる。それは、幼い頃のヒロトが放った「世界で一番好き」という一言を、母が大切に守り続けていた証だった。
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「プロットを書きながら泣いた」



元ゲーム会社デザイナーという経歴を持ち、現在はストーリー漫画を中心に活躍する吉良いとさん。本作へのこだわりを伺うと、「これまで描いたシリーズの中でも特に思い入れが強い」と語る。「自分も片親で母にはずっと迷惑をかけっぱなしで……。プロットを書いているとき、さまざまな感情がリンクして思わず泣いてしまいました」という言葉通り、作品には作者自身のリアルな熱量が込められている。
単なる「お涙頂戴」の物語ではない。大切な人の死を完全に乗り越えることはできなくても、その人が遺した愛を噛み締めながら、少しずつ前を向いて歩き出す。そんな優しくも力強いメッセージが、多くの読者の心を揺さぶっている。
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「息子のいる私には刺さりすぎる」
本作がX(旧Twitter)にアップされると、リプライ欄には「今回も最高でした!」「葬儀屋さんの漫画で過去一泣いた」といった感想が殺到。特に子を持つ親世代からは、無償の愛を注ぐ母の姿に自分を重ねる声が多く寄せられた。独りで食卓に座り、母が遺した最後の唐揚げを口にするヒロト。その一口に宿る思い出と後悔、そして感謝。
吉良いとさんの描く『ようこそ亡霊葬儀屋さん』シリーズは、死者と生者の間にある「伝えられなかった想い」を丁寧に掬い上げる。完全に立ち直る必要はない、引きずったままでもいい。烏丸枢が語る言葉の数々は、大切な人を失った経験のあるすべての人への救いとなっている。
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画像提供:吉良いと(@kilightit)
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