
東京への憧れを抱いて上京した美春は、金銭面を自力で工面することを条件に大学入学を果たした。しかし、そこで待ち受けていたのは、華やかな都会育ちの学生たちとの決定的な格差だった。うみの韻花(@umino_otoka)さんの『人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ』は、一人の女性が東京の光と闇に翻弄される姿をリアルに描いている。
続きを読む
埋められない金銭感覚の断絶



奨学金と日々の生活費を稼ぐことに追われる美春に対し、都内在住の友人・桜子は親から贈られたハイブランドのバッグを手にしていた。ある日、桜子に誘われて訪れたカフェで、美春は1人7000円のアフタヌーンティーを注文することになる。1日のバイト代が瞬時に消える価格に、美春は食べた心地がしない。
さらに、バイトの疲れで居眠りをする美春に対し、桜子は「大学生活の方が大事だよ」と無邪気に助言する。バイトをしなければ友人と同じ場所に立つことすらできない美春は、自分より貧しい世界が身近にあることを知らない桜子の言葉に、強い現実味を突きつけられた。自分が何のために大学に来たのか、本来の目的が見えなくなっていく葛藤の始まりだった。
続きを読む
港区女子への変貌と失われる純粋さ
作者のうみのさんは、この物語に自身の経験を投影しているという。上京後の理想と現実のギャップや、若さの勢いでお金に執着してしまった過去を主人公に重ね合わせているのだ。美春はやがて大学の準ミスコンに選ばれたことをきっかけに、飲むだけで数万円が手に入る「港区女子」の世界へと足を踏み入れていく。
この変遷を描く際、うみのさんは元港区女子への綿密な取材を行い、システムや実態を調査した。漫画表現においても、美春が煌びやかな世界に染まっていくにつれ、瞳のハイライトを徐々に減らしたり、整形の度合いに合わせて顔の比率を微妙に変えたりと、細部までこだわり抜いている。お金を手にすることが幸せに直結するのか。1年半の制作期間を経て完成した本作は、豊かさの代償と、容易には抗えない東京の魔力を読者に問いかけている。
続きを読む
取材協力:うみの韻花(@umino_otoka)
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。
記事一覧に戻る