
自身の体験をもとにしたコミカルな漫画で注目を集めているキクチさん(kkc_ayn)。母の在宅介護と看取りを描いた「20代、親を看取る。」でも大きな反響を呼んだが、現在は父の闘病をテーマにしたコミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」を発表している。母を見送ってから約2年後、今度は父が倒れ、一人っ子として数々の決断に向き合う日々が描かれている。
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ICUを抜けて得た「安心感」と前向きな変化



父の容体は一度持ち直し、ICUから一般病棟へ移ることとなった。尿量の増加など回復の兆しが見え始め、八方塞がりだった状況から一歩抜け出したかのような感覚があったという。
「ICUと一般病棟で大きく違うのは“安心感”でしょうか。一般病棟に移れるということは生命の危機を脱したということなので、確実な前進を感じます」とキクチさんは語る。10日間のICU生活は、回復の実感が持てないまま続いたため非常に長く感じられたと振り返る。
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その反動もあり、一般病棟に移ってからは父もキクチさんも明らかに気持ちが前向きになっていったという。ただし予断は許されず、個室での対応や防護対策は継続していた。
介護は?費用は?退院後の現実と葛藤
一方で、退院後の生活をどうするかという問題は重くのしかかる。母のときは自宅介護と看取りを選んだが、今回は状況が異なった。
「まず、自宅での介護だけは“絶対になし”でした」とキクチさんははっきりと語る。「母の介護のときでさえ父や訪問医療と連携しても体を壊すほど大変でした。ひとりで介護をするのは到底無理です」。そのため施設入所が現実的な選択肢となるが、費用面の不安が大きい。
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さらに、空き家となる実家の管理や不動産名義の問題、贈与に関する疑問など、考えるべきことは次々と浮かぶ。「頭にはハテナばかり」で、税理士の解説動画や医師による施設選びの情報を見て知識を集めていたという。
それでも会話で希望が見えた
そんな中でも、父は退院後の生活について前向きに語るようになっていた。「元気になったら散歩に行きたいなぁ」といった言葉に、回復への実感がにじむ。
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「会話ができるって本当に素晴らしいです」とキクチさんは語る。これまでは意思がわからず、自分の判断に頼るしかなかったが、「実家には住まなくて良い」と父の言葉で方向性が定まるだけでも大きな負担軽減につながったという。
さらに、「ICUにいた頃と比べて“活力”が全く違う」とも感じたという。視線の安定や声の張り、漂う雰囲気から「おれは回復するぞ」と体全体で訴えているように感じられたと振り返る。その姿に、退院も近いのではないかという確信すら抱いた。
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回復の兆しと現実的な課題が交錯する中で描かれる今回のエピソード。淡々とした語り口の中に時折差し込まれるユーモアが、重いテーマにやわらかな余白を生み出している。
取材協力:キクチ(@kkc_ayn)
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