
一年前に亡くなったケイは、彼女・美奈子が想い続ける存在だった。死後も霊となり彼女のそばを離れず、まるで恋敵を牽制するかのように振る舞う。その姿は一見、執着や嫉妬にも見える。しかし読み進めるうちに、その印象は静かに揺らぎ始める。イララモモイ(@mina_kan_chan)さんによる『美奈子に近づくな』は、そんな違和感を巧みに積み重ねることで読者を引き込み、3.4万いいねを集めた話題作だ。「最後まで読んでからもう一度見返した」「何度読んでも成立する」といった声が寄せられている。
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止まったままの想いと動き出す関係



美奈子は亡くなったケイを忘れられずにいる。その気持ちを知りながらも、彼女を想い続けるたくは、報われない立場に置かれていた。ケイの姿が見えるのはたくだけであり、美奈子には届かない。死者を想い続ける女性と、その女性を想う男、そして彼女を見守り続ける霊。三者の関係は静かに均衡を保っていた。
それでも、時間は確実に流れている。ケイの死から1年が過ぎてもなお、美奈子の中には彼が生き続けていた。たくはその現実に葛藤しながらも、彼女ごと受け止めようと決意する。そして「お前のこと好きだ。付き合ってほしい」と告白する。
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しかしその瞬間、見えない場所から強く制止する声が飛ぶ。「たく!頼むからやめろ!!告ってんじゃねぇぞ!!」その必死さは、単なる嫉妬とはどこか違っていた。
「そういうことか!」“守る”という行動の裏側にあったものとは
ケイはなぜ、死後も美奈子のそばに留まり続けたのか。その行動は一見すると、彼女を他の男から遠ざけるための執着にも見える。
しかし物語のラストで、その意味は大きく反転する。読者が感じていた違和感は伏線として回収され、「そういうことか」と納得に変わる構造だ。
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本当に怖いのは何か
本作が描いているのは、単なる三角関係ではない。“霊が怖い”という先入観を利用しながら、より根源的な恐怖へと視点をずらしていく。読後に残るのは、じわじわと広がる不気味さであり、「本当に怖いのは何か」を問いかける余韻である。
読み終えたあと、もう一度最初から見返したくなる。そのとき初めて、ケイの言動の意味が違って見えてくるはずだ。
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作者が語る発想と創作の背景
ペンネーム「イララモモイ」の由来について、作者は「文字列にはなんの意味もなくて、とにかく意味不明な名前を考えようと絞り出した」と語る。さらに「中学時代に、架空の人物が架空の人物に向けて書いた手紙を廊下に置く遊びにハマっていて、そのときの差出人の名前がイララモモイだった」と明かし、現在の活動につながる原点を振り返った。
イララモモイさんはサイコミで『付き合えなくていいのに』も連載。「片思いをリアルに描いた漫画をポップな雰囲気で読みたい方はぜひ」とコメントしている。恋愛のもどかしさを描く一方で、本作のように読者の認識を揺さぶる構成力も魅力のひとつである。
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取材協力:イララモモイ(@mina_kan_chan)
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