
夜、一人きりの部屋でふと背後に視線を感じる――そんな経験に覚えはないだろうか。鳩ヶ森(@hatogamori)さんのホラー漫画「周波数」は、そうした“ささやかな恐怖”を静かに増幅させる作品である。古いラジカセから流れるノイズ、その隙間に紛れ込む正体不明の声。気づいたときには、日常の輪郭がわずかに歪み始めている。
背中に貼りつく気配と子どもの記憶



本作のテーマについて、鳩ヶ森さんはこう語る。「今回のテーマは『子供が夜の暗い自室で背中に感じる薄ら寒さ』です。皆さん覚えがあると思うのですが、自室で一人でいるときやお風呂に入っているときなど、自分の後ろに感じる何者かの気配ってあったりしますよね。」
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誰もいないはずなのに、確かに“いる”。その確信だけが先に立ち、理由は後からついてくる。子どものころに抱いたあの感覚を、思い出した瞬間から逃げ場はなくなる。
ラジカセがつなぐ夜と異音の記憶
モチーフとなったのは、どこか懐かしいラジカセだ。「私自身が子供の頃からラジオが好きで、ラジカセに思い入れがあります。中学生の頃、夜遅くまで机に向かうときに使っていました。」
静かな部屋、かすかな機械音、そして手で合わせる周波数。ほんの少しズレただけで、世界は簡単に別の“音”へと変わる。「たまにノイズに混じって呪文のような意味不明な言葉が聞こえることがありました」という体験は、ただの記憶では済まない不気味さを帯びている。
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予告なく訪れる「日常に入り込む恐怖」
「今なら外国の放送が混線しているのだろうとわかりますが、子供だった当時はその不気味な音声は怪現象そのもの。」説明がつくはずの出来事も、状況が変われば意味を持たなくなる。
鳩ヶ森さんは「断りもなく、“日常にいきなり恐怖が片足を突っ込んでくる”ような漫画を目指した」と語る。その通り、本作では恐怖が静かに侵入してくる。気づいたときには、すでに遅い。
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聞こえているのは本当に“人の声”なのか
作中でラジオから流れるのは、火災で一家が亡くなったというニュース。しかしその報道は途中で内容が変わり、どこか不自然なズレを見せる。人が聞き取れる周波数は一般的に20Hz以上とされるが、それより下の領域には何があるのか。
読者からは「心霊スポットは19Hz以下が多いらしい」という声も寄せられた。つまみで微調整するしかない古いラジオは、いったいどの周波数を拾っていたのか――その答えに触れたとき、もう後戻りはできない。夜更かしが増えるこれからの季節、静まり返った部屋でこの作品を読むなら覚悟が必要だ。何気ない音や気配が、少しだけ違って感じられるかもしれない。
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ちなみにホラー漫画家である鳩ヶ森さんは、自身初のミステリー漫画『仮門(かりもん) 消えた少女―10年目の真実』を電子書籍として出版、現在好評発売中である。『仮門 消えた少女―10年目の真実』は、10年前の幼女失踪事件の真相を追うミステリー漫画で、前半に散りばめられた数々の伏線を後半で見事に回収していく全192ページの本格派作品だ。真実が明らかとなる最後の最後まで気を抜けない読み応えある一作となっているので、こちらもあわせて読んでみて!
取材協力:鳩ヶ森(@hatogamori)
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