
三ノ輪ブン子(@minowabunko)さんの作品『鬼の居る間にわたしたちは』は、東北地方に伝わる「ムカサリ絵馬」という風習をテーマにしたホラー漫画だ。未婚のまま亡くなった者を弔うための“死後婚”を描く本作は、読む者に底知れぬ恐怖を与える。
東北に伝わる死後婚の掟



江戸時代から山形県を中心に残る「ムカサリ絵馬」は、婚礼服姿の男女の絵を奉納して死者を慰める儀式だ。しかし、この儀式には決して破ってはいけない掟がある。それは、亡くなった人の相手役に実在する生きている人を描いてはならないということだ。もし掟を破れば、描かれた人間はあの世へ連れ去られてしまうと言い伝えられている。
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本作の主人公で怪異が見える螢は、転校生のあざみと仲良くなる。あざみを執拗に追うストーカーの男子生徒が現れ、「生き霊になられたら困る」と危惧していた矢先、事態は「ムカサリ絵馬」にまつわる不気味な展開へと加速していく。
死者と生者のあいまいな境界
三ノ輪さんは、日本らしいホラーを描くためにこの風習を題材に選んだ。死者と生者を対等に扱う日本の感覚に惹かれたというが、調べていくなかでフランスでも死者との結婚が認められていることを知り、死後の結婚という概念の広がりを感じたという。
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ストーリー終盤、それまで目を閉じていた新郎姿の男子高校生がうっすらと目を開けるシーンは、本作の最も恐ろしい場面の一つだ。三ノ輪さんは、この描写について「なぜ目が開いたのか」に明確な答えは設けていない。死者になっても思いや存在が消えるわけではなく、生と死の境目があいまいな世界を描きたかったと語る。
怪異と人間の思いが混じり合うなかで、あざみの運命はどうなるのか。実在する風習の重みを感じながら読み進めると、より深い恐怖を味わえる。
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取材協力:三ノ輪ブン子(@minowabunko)
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