
宮野シンイチ(@Chameleon_0219)さんは、自身の体験に基づいた夜逃げ屋の現場を、リアルかつユーモアを交えて描く漫画家だ。人気シリーズ『夜逃げ屋日記』は、DV被害などに遭う依頼者を救い出す過酷な実録。今回は、警察沙汰となった現場の裏側で起きた、ある悲しい決別の物語を紹介する。
流産という取り返しのつかない現実



現場では、逆上して包丁を振り回す夫が警察に取り押さえられていた。夫は「役立たずのグズ女」と妻のヒメカさんを罵倒し続けていたが、そのまま連行される。夜逃げ作業が進むなか、宮野さんは夜逃げ屋のスタッフであるビッキーさんに連れられ、海辺のベンチへと向かった。
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そこでビッキーさんが見せてくれたのは、一通の封筒に入った胎児のエコー写真だった。実は、ヒメカさんは夫の暴力によって流産していたのだ。夫はその事実を全く知らず、ヒメカさんは一人でその悲しみを抱え続けてきた。彼女はこの写真を捨てて過去をすべて忘れようとしたが、どうしても自分では捨てることができなかった。
過去を燃やして踏み出す一歩
ヒメカさんの依頼は、キッチンからこの写真を回収し、代わりに処分することだった。ビッキーさんは海辺でライターを点け、すべてのエコー写真を燃やす。その光景を目の当たりにし、話を聞いた宮野さんは、あまりの惨状に気分が悪くなったという。
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宮野さんは「言葉に詰まるというか、もう取り返しのつかないことなので気分が悪かった」と当時の心境を語る。関係のない自分でさえいたたまれない気持ちになるのに、当事者の苦しみは計り知れない。宮野さんの問いに対し、ビッキーさんは「私がやらないで、誰がやんのよ」と、同じ女性として依頼者に寄り添う覚悟を見せた。
『夜逃げ屋日記』は待望の第4巻が発売され、著者と社長の対談(前編/後編)も公開されるなど、さらなる注目を集めている。ヒメカさんのように、暴力に晒されながらも必死に新たな人生を歩もうとする人々がいる。本作は、そんな極限状態にある人間模様を鮮烈に描き出している。
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取材協力:宮野シンイチ(@Chameleon_0219)
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