
身長170センチのひなは、低身長男子に片思いをしている。ある日の下校時、靴箱で彼と友達の会話を耳にする。「自分よりデカい彼女とかねーわ」「あーそれな」。その言葉に、ひなはその場にへたり込む。「やっぱこんなデカい女、イヤかぁ」と胸の奥でつぶやき、静かに涙をこぼすのだった。
“受け止めてきた”けれど、好きな人の言葉は別だった



これまでも、教室では後ろの席になった男子に「黒板見えんし。もうちょいかがめや」と言われ、体育では「男の試合に出ね~?」と声をかけられ、名前をからかわれることもあった。同年代の女子から「おねーさま」と呼ばれることもある。それでも、ひなは受け止めてきた。自分の身長は変えられないとわかっているからだ。
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しかし、好きな人の何気ないひと言は違った。「さすがにヘコむなぁ」という感情は、ごまかせない。強がりきれない本音が、静かにあふれ出す。そんな等身大の心情が、本作の大きな魅力である。
「個性であって、ウィークポイントなんかじゃない」
作者の夏野ばな菜(@NatsunoBanana)さんは、高身長女子をヒロインにした理由について、「けっこう“あるある”なんじゃないかと思いまして!」と語る。そして「少しでも『それは個性であってウィークポイントなんかじゃないよ』と言いたかったです」と続ける。ないものねだりで、背が低い人は高い人に憧れることもある。見る角度が変われば、コンプレックスは魅力にもなるのだ。
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名付けに込めた思いと遊び心
ひなの名前に“かわいらしさ”を込めたのも、そうした思いからだという。「名は体を表す」との考えのもと、純粋でやさしいヒロイン像に「ひな」という名前を与えた。また、登場人物の名字について「魚見さんて日本に510名しかいない名字ですね」といった読者の声も届いたという。これについては「実は、うちの近所の住所です」と笑う。
「ジャンプルーキー!」で連載した「SSS」でも「ABCD→江井・備井・椎・出居」などアルファベットをもじるなど、遊び心を加えているそうだ。こちらは楽しい職場と愉快なサラリーマンたちが繰り広げるラブコメディがスタートで、現在は登場人物たちが結婚し、家族が増え…そんなにぎやかな日常を描いています」と語る。人の内面やつながりを丁寧に描く姿勢は、本作にも通じている。
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高身長であることに悩むひなの姿は、多くの人の記憶や痛みに重なる。けれど、その個性は決して欠点ではない。共感と希望が交差する青春ドラマである。
取材協力:夏野ばな菜(@NatsunoBanana)
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