
「むかしむかし、あるところに…」というお決まりの語り出しで始まる日本の昔話。子どもの頃に親しんだ物語も、改めて全編を通すと意外に長く感じるものだ。映画や動画を倍速で視聴する「タイムパフォーマンス(タイパ)」重視の現代において、もし童話もアップデートされたとしたらどうなるだろうか。
そんな思考実験をギャグ漫画として具現化したのが、クリエイターの津夏なつなさん(@tunatu727)だ。Amazonで無料公開中の電子書籍『4コマ1000本ノック』第6巻に収録された『忙しい人のための浦島太郎』と『忙しい人のための桃太郎』は、名作の過程を極限まで削ぎ落とし、衝撃的な結末へと爆走する作品となっている。
続きを読む


【漫画】名作漫画をイッキ読み
亀を助けて即老人?竜宮城をカットした浦島太郎
『忙しい人のための浦島太郎』は、子どもたちが亀をいじめているおなじみの導入部からスタートする。主人公が亀を助け、亀が感謝を告げるところまでは原作通りだ。しかし、次の瞬間には亀が口から煙を吐き出し、浦島は一瞬にして老人へと変貌してしまう。「連れて行って」と頼む暇すらなく、竜宮城での酒池肉林や乙姫様とのロマンスといった楽しい過程はすべてカット。ただただ老化するというバッドエンドだけが抽出された、あまりに救いのない時短物語である。
一方の『忙しい人のための桃太郎』はさらに過激だ。「どんぶらこ」というフレーズが登場する隙すら与えず、鬼退治が完了してしまう。原作の筋書きすら破壊する爆速の展開に対し、読者からは「太郎の要素が行方不明」「めちゃくちゃショートカットした」「これ以上ない短縮」といったツッコミが殺到した。
続きを読む
「過程」が変われば物語の意味も変わる
作者の津夏なつなさんによると、これらの作品は「4コマだけで物語を完結させる」という挑戦から生まれたという。時短を追求すると、どうしても展開を乱暴に畳むしかなくなる。その強引さこそが面白さの核なのだ。また、この2作品は対照的な構造を持っている。『浦島太郎』はプロセスを全カットして唐突なバッドエンドに突き落とすことで笑いを生んでいるが、逆に『桃太郎』は唐突にハッピーエンドを迎えることで、そこに至るまでの背景を読者に想像させる余韻を残している。「辿り着く結末は原作と同じでも、プロセスを変えることで全く別の物語になるのが面白い」と津夏さんは分析する。
取材協力:津夏なつな(@tunatu727)
※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。製品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格が異なる場合があります。
記事一覧に戻る