
コロナ禍に一般企業を退職したことを機に、「ヤングジャンプ」の「1億円40漫画賞」に応募し、その作品が見事入賞した矢嶋こずみ(@kosmy8588)さん。現在は版面漫画やWebtoonの背景作画・仕上げを担当する仕事をしながら創作活動を続けている。
そんな矢嶋さんの作品「100年分の度胸試し」がネット上で“考えさせられる”と話題だ。100を超えるコメントがつき、「こんな世の中が来たら怖い」「命の使い道、我々は正しく選べているだろうか」「心が痛い…」などの感想が飛び交った。この作品について、作者の矢嶋こずみさんに話を伺った。
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ドナーとして生きる少女・フリージアとの出会いが運命を変える



舞台は近未来。再生医療を支える“ドナー法”の施行から50年が経ち、人類の平均寿命は100歳を超えていた。致命傷でなければ死に至らない社会が実現する一方で、若者の間では「痛みを共有することで仲間意識を高める」という名目の、危険な“度胸試し”が流行し、社会問題となっていた。
その渦中で、主人公のマリーはただ一人、飛ぶことを拒み続ける。周囲からの圧力にも屈しない彼女の前に現れたのは、自分と瓜二つの少女・フリージア。彼女はマリーのドナーとして生まれた存在だった。「1日だけ」という約束で入れ替わった二人の選択は、やがて取り返しのつかない現実を浮かび上がらせていく。
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本作「100年分の度胸試し」について、作者の矢嶋こずみさんは、カズオ・イシグロの著書であるわたしを離さないでから大きな影響を受けたと語る。「原作では徹底してドナー視点のお話が描かれていたのですが、読んだときに『この世界に生きている人間たちはどんな気持ちなんだろう?』と思って描いたのが拙作になります」と語ってくれた。
「悲しい結末で終わった原作に対し、前向きで希望が見出せるようなお話を目指しました」と本作の結末には希望を込め、人が誰かや世界のために行ったことは生き続けるという想いを重ねたそうだ。生まれてきた意味は最初から与えられるものではなく、生きていく過程で一人ひとりが作り上げていくものなのだと、本作は静かに問いかけてくる。重いテーマでありながらも、確かな余韻と希望を残す本作が気になった人は、ぜひ読んで欲しい。
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取材協力:矢嶋こずみ(@kosmy8588)
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