「サステナブルな次世代農業を起点とする超循環型社会を実現する」をミッションに、高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の開発、製造、販売を行う株式会社TOWING。代表取締役CEOの西田宏平さんに、開発のきっかけや宙炭について話を伺った。

名古屋大学で再生可能エネルギーや土壌微生物について研究をしていた西田さん。「名古屋大学や農研機構で開発された土壌の微生物環境を人工的に再現する技術と出合い、社会実装をしたいと思うようになりました。最初は研究の一貫での普及を考えたのですが、大学がスタートアップ支援をしていることを知り、起業も選択肢のひとつに入りました」と話す。
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当初は、企画はできるものの売り上げや利益につながる状況ではなく、起業に向けては苦戦を強いられたが、宇宙に関するビジネスアイデアのコンテストで得た賞金を元手に法人化。2020年から国の予算をもとに企業と協働して月面農業の実現を目指し、現在はSPACE FOOD SPHEREでのプロジェクトも進めている。また2022年からは地球上にも目を向け、宙炭の開発と製造、販売を展開。現在は複数の企業との提携をはじめ、農家への販路も広げつつある。
宙炭は、地域や企業で未利用とされている食料・飲料残渣や農業残渣などのバイオマスを炭化して作ったバイオ炭に、独自の技術で土壌微生物を定着させた特殊肥料・高機能バイオ炭だ。「昨今、食糧生産由来の温室効果ガスの排出量が増え、土壌劣化が深刻化してきています。化学肥料から有機肥料への転換など、国も持続可能な食糧生産システムへの切り替えを推進していることも、起業の追い風となりました」と西田さん。
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一方で、化学肥料から有機肥料へ変えると収量が下がってしまったり、安定的に作物が作りづらいという課題もある。西田さんが宙炭を開発するにあたって着想したのは、数千年前のアマゾンにあった「テラプレタ」と呼ばれる肥沃な土だ。「土に有機物や炭が混じった非常によい土だということがわかり、農作物の収量も下がりづらいこともわかっています。この土を作るには時間がかかるので、現代農業には当てはまらないと言われてきましたが、できるだけ早くテラプレタに近い環境を作ることができないか、と考えました」(西田さん)。

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農林水産省が定義する土づくりとは、養分供給力などの化学性、水分供給能や通気性などの物理性、有用生物の活性などの生物性が統合されたものだ。宙炭はこの3つの性能をよくすることが可能であり、農地に施用することによって、通常3〜5年はかかるといわれる土壌改良を短期間で実現し、有機肥料メインの農業でも収量の安定化を図ることができる。「最近では、カリフォルニアの水不足の土壌に宙炭を施用したところ、保水性の向上効果により、干ばつ時にも一定以上の収穫量を維持できることが確認されました」と西田さんは話す。
「特に宙炭は炭に微生物を培養することで生物性の改善に寄与し、化学肥料から有機肥料へ切り替えた初年度から収穫量が高い所で安定するのが特徴です」。実際に宙炭を使った農家からも「土作りに時間がかかっていたが、宙炭を施用したらすぐに効果が出た」と喜びの声が届いたという。
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「当社の農園も、50年くらい農地として使われていなかった土地ですが、宙炭で土壌改良をして今はいろいろと作物を栽培しています」





TOWINGのように社会課題解決を目指す、いわゆるディープテックと呼ばれる企業は技術を普及させるために、モノの製造工場が必要とされる。この点も苦労のひとつだと西田さんは言う。
「大量生産して販売するのか、販路を確保してから生産するのか、そのバランスをうまく調整しながら進めていく必要があります。私たちも最初は人力で、パートさんに助けていただきながら宙炭を作り、徐々にスケールアップするために資金調達を行って自動化し、量産を進めてきています。こうした需要と供給のバランスは常に考えていくことが大切だと思います。宙炭はスケールメリットのある商品。だからこそ、工場の生産能力を高めて効率をよくすれば、その分販売価格が抑えられて多くの人々に使ってもらうことができるので、そこを目指していきたいと考えています」
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今後はさらに化学肥料から有機肥料への切り替えに関して着目していくと西田さんは言う。
「たとえば、卵は国内生産がほとんどですが、卵を産む鶏が食べる餌は海外に依存しています。卵は自給できていても餌が自給できないから、結果として国内の食料自給率は10%となってしまいます。日本の食料自給率は40%ぐらいと言われていますが、作物に使われる化学肥料は99%以上輸入に頼っており、国産肥料である有機肥料の利用率は非常に低いことが問題になっています」
「卵が飼料ベースの自給率を考えるなら、野菜も肥料ベースの自給率で考えたほうがよいと考えていまして。そうすると、国内で作物が自給できているのはわずか0.数%に過ぎません。このサイクルを止めるためには、有機肥料への切り替えは絶対に必要です。しかし現状は、有機肥料の源となる残渣もうまく処理できていないです。私たちはそれをしっかりとアップサイクルしていき、有機肥料への切り替えを推進していきたいと思っています。世の中から化学肥料がなくなると江戸時代に戻るといわれます。江戸時代に戻るのではなく、サステナブルで持続可能ないわゆる『ニュー江戸時代』を作っていかないといけない。またこの技術を東南アジアや世界各国に普及させて展開しながら、宇宙プロジェクトも引き続きやっていきたいと考えています」

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