
納品したはずのデータが、なぜか改ざんされていた——。先方から届いたのは「縮尺が違うので、すべて作り直してほしい」という連絡だった。作成時のデータと明らかに違う内容に、担当していた辰ノたむ(@tatsuno_tamu)さんは言葉を失う。確認を重ねるうち、ある事実が浮かび上がった。先方に送信される直前、同じ社内の社員・村瀬がデータを触っていたのだ。しかし、その事実を社長に伝えても、信じてもらえなかった。今回紹介するのは、そんな社内トラブルを実体験として描いた『「俺の方が経験あるからさ」〜年上部下が全然言うことを聞いてくれません!〜』である。
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「俺の方が経験あるからさ」「マニュアルさえあればいい」が免罪符になる職場



辰ノさんが再就職したのは、建築系の下請け会社だった。家族経営に近い小さな会社で、繁忙期にはアルバイトを含め10人ほどで業務を回していたという。引き継ぎを終え、仕事に慣れはじめた頃、ひときわ存在感を放っていたのが村瀬という男性だった。
「マニュアルがあれば説明はいらない」「自分は経験があるから」。それが彼の口癖だった。作業は早く、古株ということもあり、会社としては扱いやすい人材だったのかもしれない。しかし、修正やミスの指摘をすると態度は一変する。「そんな大事なことなら先に言え」「俺は悪くない。お前が直せ」。経験を盾に、責任を他人に押しつける姿勢が目立っていた。
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立場が逆転した途端に始まった違和感
繁忙期が終わり、辰ノさんは社員として雇用される。一方、アルバイトだった村瀬も社員に登用された。ここから関係性はさらにこじれていく。村瀬は「俺の方が経験あるから」と、あからさまに辰ノさんを見下すようになった。
やがて取引先から「ミスが多く、意思疎通ができないため担当を変えてほしい」という連絡が入る。違和感を覚えた辰ノさんがメール履歴を確認すると、村瀬が都合の悪いデータをUSBに移し、証拠を消そうとしていた痕跡が残っていた。
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最大のトラブルと、信じてもらえなかった真実
決定的だったのは、採寸データの改ざん事件だった。辰ノさんが担当していた業者から「データが違う。すべて作り直しだ」と強いクレームが入る。原因は、村瀬による意図的なデータ改ざんだった。証拠をそろえて社長に説明したものの、返ってきたのは疑いの目だった。
なぜ注意されないのか。その理由は、村瀬が社長の従兄弟だったからである。組織の中で、正しさよりも血縁が優先される現実に、辰ノさんは退職を選ぶことになった。
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「連載中に『仕事ができる人はどこでも必要とされる』というコメントをもらい、当時ボロボロだった心が救われました」と辰ノさんは振り返る。妬みから始まった行動が、取引先まで巻き込む大きなトラブルへと発展した今回の出来事。その結末は、決して他人事ではない。
辰ノさんは現在も、仕事や人間関係、夫婦や子育てなど、実体験をもとにした「共感」と「少しスカッとする」漫画を描き続けている。日常に潜む理不尽や違和感を、物語として昇華するその視点にも注目したい。
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取材協力:辰ノたむ(@tatsuno_tamu)
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