
寿司屋で順番待ちをしていたとき、店員が人数の少ない客をカウンター席に優先的に案内したところ、「順番を抜かすな、非常識だぞ!」と、自分の父親が店内で騒ぎ出した——。現代の常識とのズレに気が付かず、古い価値観のまま自分たちは正しいと主張する親。その押し付けをわずらわしく感じる娘が主人公の漫画「わたしの親が老害なんて」を紹介するとともに、著者の西野みや子(@miyakokko61)氏にインタビューを行った。
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わずらわしい親の言動と、妊娠した娘を襲う抑圧



主人公の栄子の80代になる両親は近所に住んでいた。子どもが小さいときはとてもありがたい存在だったが、娘が巣立ち夫婦二人のとき間が当たり前になると、近所に住んでいる親が煩わしくなった。
元教員だった父と、昔の価値観を押し付けてくる母。いっしょに外出すれば店でクレームを言い、悪びれない親の代わりに栄子が謝罪することもあった。「老害」と呼ばれるのが、自分の親だなんて、栄子は周囲の目がつらかった。
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そんななか、妊娠した娘の美咲が帰省する。父と母は「つわりでほとんど食べられない」という美咲の声を無視してお寿司の出前を取り、「生ものは控えてる」と言えば「お祝いだから」「ちょっとくらいいいんじゃないか」といってきかない。さらには、「染めた髪は、赤ちゃんに悪い影響があるんじゃない?」と言い出して、美咲を追い詰める。
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「老害」は身近に潜む!作者の実体験が描く親世代の違和感
本作はどのような経緯で制作することになったのか尋ねたところ、「『老害』というテーマは担当編集さんからいただいた企画です」と西野氏は答えた。
西野氏自身、「老害」は特別な存在ではなく、誰の身近にも潜んでいる可能性があるのだと感じ、このテーマで描きたいと思うようになったという。年齢に関係なく、自分の価値観や経験をほかの人に押しつけてしまったり、異なる考え方を受け入れようとしない態度が、そうした摩擦を生む原因になるのではないかと考えている。
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本作の注目ポイントは、西野氏の私的な体験が多く反映されている点だ。
西野氏は、過去に妊娠中のつわりでひどく苦しんだとき、「二人分食べないと」と言われたプレッシャーや、無痛分娩への反対意見など、親世代やその上の世代から言われて感じた違和感を多く描いている。作中でも、祖父母の古い価値観が孫の美咲にまで及び、娘の栄子も長年両親から言われていたことが無意識に体に染み込んでいることがわかるように描かれている。
「老害」は誰にでも潜む可能性があることを伝えたかったので、あえてどこにでもいるような登場人物にしたという西野氏。
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最後に読者へ、「その実態は特別なことではなく、私たちの身近な人、そして自分自身にも起こりうるものです」と語り、この作品を通じて、「老害」とされる人たちの背景を知ることで、私たちもまた同じ道を歩まないように、自省するきっかけになればうれしいとメッセージを寄せた。
取材協力:西野みや子(@miyakokko61)
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