ウォーカープラス

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ゴッホの絵は、なぜこれほど日本人の心をとらえるのか。その理由を「浮世絵から受けた影響」という美術史的事実だけで語り切ることはできない。構図の大胆さや力強い輪郭線、鮮烈な色彩など、たしかに両者は響き合う。しかし私たちがゴッホに強い親近感を抱く背景には、より深い要因が潜んでいる。それは、ゴッホという人物の内面にある、不器用さや誠実さ、家族への深い思いといった「人間の物語」である。


『まんが人物伝 ゴッホ 希望の種をまいた不屈の画家』を読むと、その実像が鮮明に立ち上がってくる。一般に「耳を切り落とした」「自ら命を絶った」といったエピソードばかりが強調されがちだが、実際のゴッホは家族を深く愛し、強い信仰心を抱きながら懸命に生きた青年だった。その姿は、不器用に生きる誰かの人生と重なり、読者自身のあり方にも投影されるかもしれない。本記事では、漫画で描かれたゴッホを支えた家族のエピソードと、監修者である西洋美術史学者・圀府寺司さんへのインタビューを通して、「人間としてのゴッホ」の像に迫る。


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