
WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ポンコツお嬢様と陰キャ世話係」を連載中の漫画家の野愛におし(@nioshi_noai)さんのオリジナル作品「猫神オカンはお世話したい」もそうした漫画の1つだ。同作は、小さなころから決して涙を流すことのなかった少年「ノボル」が、母の墓参りの日、人の何倍もの巨体の猫に追いかけられる場面からはじまる。自分の死を覚悟し、涙が出かかるノボルだったが、猫は彼を捕まえると、親愛の表現である毛づくろいでお世話。その様子に「デッカイ猫のオカンだ!」と感激するとともに、亡き母の面影を垣間見て感極まるノボル。だが、猫のその優しさにも理由があって……、という物語。人と猫、種は違えどお互いの喪失を癒やす光景に胸が突き動かされる短編だ。そんな同作の制作背景を、作者の野愛におしさんに取材した。
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キャラクターが実在するかのようにリアルに描きたかった



本作「猫神オカンはお世話したい」は、もともとジャンプ+の連載争奪企画のために執筆されたが、惜しくも2位で連載権獲得には至らなかったそうだ。しかし、作者の野愛におしさんは、この経験を通じて「主人公により人間味を出せるようになり、自分の作品に合うテンポ感を再確認できた」と振り返り、大きな収穫があったと話す。
作中の猫オカンでは、「可能な限りリアルに表現し、キャラクターが実在するかのようにしたかった」と制作のこだわりを明かす。そのため、猫のパーツ一つひとつに注力し、毛並みの弾力や怖さ、つぶれ具合までリアルに伝わるよう表現を追求したそうだ。さらに、額の模様や耳の毛に人魂のようなデザインを加え、印象を強めたという。また、メスらしさを表すため、柔らかな表情や目を細める場面を多用して優しいまなざしを表現したそう。
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X上で野愛さんが「当時のいろんな挑戦が含まれている作品」と語る同作は、漫画の描き方を模索していた時期に、王道の技術習得の成果を詰め込んだものだという。見開き構成やコマ運びによる時間表現、ページをめくる際の感情的演出など、多彩な技法が用いられているそう。なかでも思い切りが必要だったのは、セリフなしで表情だけで感情を描くコマへの挑戦だったが、「やってみたら意外としっくりきたので、これ以降は頻繁に自作品に取り入れています」と教えてくれた。
家族を失った現実を少しずつ受け入れながら前へ進んでいく姿。そして、過去にとらわれて衝突しながらも、最終的に「親離れ」と「子離れ」を同時に果たす物語にしたいという思いが込められている「猫神オカンはお世話したい」をぜひ読んでみてほしい。
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取材協力:野愛におし(@nioshi_noai)
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