読者のコメント欄で「意味が理解できなくても怖い」「どこから現実?」と評価される佐藤さんの創作漫画「松木さんちシリーズ」が注目を集めている。この作品は、家族それぞれが異なる精神状態で怪異に遭遇するという、混乱と恐怖が共存するホラーを描いている。作者の佐藤さんに話を聞いた。
家族の認識のズレが恐怖を生む



松木さん一家は祖母、母、そして子ども3人の5人家族だが、姉のハヅキはすでに家を出て一人暮らしをしている。その理由をハヅキは「幽霊が4人出るんだよね。4人しか出ないの」と語る。
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ハヅキがはじめて霊を見たのは、自分の部屋のベランダだ。学校の帰り道、ベランダから部屋の中を覗いている幽霊を発見し、不法侵入者だと勘違いして警察を呼ぼうとしたが、2階に上がると霊はいつの間にか消えていたという。
作者の佐藤さんは、この家族設定の意図について、「長姉だけが4人いる(4人しかいない)と思っています。家族それぞれで精神状態は違いますし、何かに取り憑かれているとしたら、その程度も違います。感受性・性格の違いによって家に起こる怪異への対応の違いを描くのはおもしろそうだと」考えたと話す。
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誰もいないはずの2階で走り回る足音
松木さんちに怪異が頻繁に起きるようになったのは、扇風機に何かが当たると弟のタクが気づいたのがはじまりだ。
あるとき、母と祖母、ハヅキがキッチンにいると、2階で走り回る足音が聞こえてきた。祖母は2階を見上げるが、タクは和室で昼寝をしていた。走り回っているのは、一体誰なのか。
タクが和室で見た不思議な話をすると、ハヅキは「寝ぼけてたんでしょ」と一笑に付す。しかし、祖母が「2階は、あんたたちの洋室しかないでしょ」と言い始め、ハヅキは「え?」と混乱する。さらに、「もー、何言ってんの?」とハヅキが冗談めかすと、今度は祖母がタクをじっと見つめ、「その子、どこの子?」と怪訝な顔をした。
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横を見ると座っていたはずのタクはいなくなっており、階段から足音が聞こえ、降りてきたのはタクだった。登場人物の誰もが混乱する瞬間である。
佐藤さんがホラー漫画を描く経緯は、「自分の中に『こういうホラーが観たい(読みたい)』という感覚があるんです」と語る。しかし、「読みたい、イメージする作品をあまり見かけないため、自分で描けたらよいなと思いました」それが漫画を描き始めるきっかけとなった。
次々に不可解な現象が起きる松木さんち。霊は住人に対し、敵意も興味もなさそうに見えるため「怖くなくて済んでる」という読者のコメントもあるが、読者自身が「どこからが現実か」を判断しなければならない静かな怖さがある。今後の展開が楽しみな作品である。
取材協力:佐藤
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