
リアルかつコミカルな漫画をSNSやブログで公開しているぼのこさん(@bono_gurai)がX(旧Twitter)に投稿した『「それって接客なの?」お客様から叱られた話』が注目を集めた。
これは、商品を一方的に勧めるアパレル店員の接客態度について、客であるマダムが注意するというエピソードだ。本作を描いたきっかけや制作秘話について、ぼのこさんに話を聞いた。
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働く人の心の揺れや葛藤を描きたい



本作が誕生したきっかけについて、ぼのこさんは、自身がアパレル販売員・店長として働いていたころの体験をもとに、「働く人の心の揺れや葛藤を描きたい」という思いから生まれたと語る。エピソードや感情の多くは実際の出来事や出会った人とのやりとりをベースに構成しているが、登場人物やストーリーは複数の体験や印象を掛け合わせて再構成した“リアルを含んだ創作”だという。
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会社と顧客の「正解」のズレ
本作を描くうえで苦労した点について、ぼのこさんは、日常のやりとりや職場の人間関係といった身近な題材は、見過ごされがちだからこそ深く掘り下げる難しさがあると言う。その中にある小さな違和感や感情の揺れを、読者に“自分ごと”として感じてもらえるよう、丁寧に描くことを心がけているとした。
お客様から接客態度を叱られた販売員の春子の立場について尋ねると、ぼのこさん自身も新人時代は、よかれと思ってした接客が裏目に出てしまう経験がたくさんあったと振り返る。
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「会社にとっての“正解”と、お客様にとっての“正解”は、ある意味異なって当然だ」とし、春子ほどの経験値では、消費者視点を極めるという本質的な理解は難しく、叱られれば当然落ち込むと語る。しかし、そうした失敗があったからこそ、相手との価値観のズレに気づけたはずであり、「私ならしっかり反省して次に活かそうと考える」と、春子の成長に期待を寄せた。
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必要なのは「ライフスタイルを想像する力」
春子は、自分が買ってほしい服を勧めていたことに気がついた。ぼのこさんも販売員時代、自分の好みや店が売りたい服に目が向きすぎて、お客様のニーズに気づけなかったことが何度もあるという。
その経験から、本当に必要なのは、ニーズや好みといった表面的な部分だけでなく、お客様のライフスタイル(生活様式や習慣・価値観)まで想像する力なのだと気づいたと話した。
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また、多くのブランドには在庫リスクの観点から積極的な販売が求められる「強化品番」が存在するが、押し売りにならないよう、その商品を必要とするお客様を見逃さない目と判断力が大切だと感じている。
今後の作品について、ぼのこさんは、働く中で感じる小さな違和感や、言葉にしづらい感情に焦点を当てた作品を丁寧に描いていきたいと語った。本作のシリーズ『アパレる』では、販売現場の多様な立場や価値観に光を当てながら、“人と人の関係性”を深掘りしていくという。読者の過去や現在の経験とつながるような、“思考のきっかけ”となる作品を目指している。
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マダムに自分の考えを見透かされた春子は、今回の経験で今まで忘れていた大切なことに気が付いたようだ。ぼのこさんはほかにも数多くの作品を描いているため、興味がある人はぜひ一度読んでみるのがよい。
取材協力:ぼのこ(@bono_gurai)
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