全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも関東各地は、伝統的な喫茶店から最先端のカフェまで、さまざまなスタイルの店が共存する、まさに日本のコーヒー文化の中心地。
東京をはじめ、関東近郊にある注目店を紹介する当連載。店主や店長たちが教える“今、注目すべき”ショップをつなぐ、コーヒーリレーの旅へ。

第7回は東京都練馬区にある「REINO COFFEE STORE」。西武池袋線中村橋駅から歩いてすぐの場所にある人気のカフェは今年で開業8年目。店は中村橋エリアの落ち着いた雰囲気に溶け込み、地元の人々の休息の場として親しまれている。
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店主の大友玲さんは都内の多くの有名喫茶店、カフェに勤めた後に開業。自身の開業のきっかけとなったのは、たくさんの“コーヒーの楽しさ”に触れることができたから。その想いを訪れた人にも伝えたいと開業した「REINO COFFEE STORE」。大友さんが思い描くカフェのあり方を見てみよう。

Profile|大友玲(おおとも・れい)
1985年(昭和60年)、東京都生まれ。何気なくはじめた喫茶店のアルバイトをきっかけに、コーヒー人生がスタート。その後も都内のいくつかのカフェや喫茶店に勤務。さまざまな知識と技術を吸収し、2017年に自身の地元である中村橋エリアに「REINO COFFEE STORE」を開業した。
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止まないコーヒーへの好奇心

大友さんが最初にカフェに勤めたのは19歳のころ。当時は特にコーヒー好きではなかったが、コーヒーを身近に感じられる環境に身を置くうちにコーヒーの魅力に気づかされた。そして、その奥深さを知れば知るほど興味が沸いてきた。
「喫茶店の次もほかの喫茶店に勤めました。そのころには『自分の店をやりたい』と思うようになっていましたね。当初、開業するのはカフェと決めていたわけではなかったので、まずは行動あるのみと夜間の調理師学校に通いはじめたんです。そのうえでもっと経験が必要だなと思って新宿の喫茶店『但馬屋珈琲店』、桜台のイタリアン『オステリア カッパ』で働いていました。2つの職場を掛け持ちしながら、夜は調理学校に通う日々は約1年続きました。濃密な時期でしたが、今思うとあっという間でしたね」

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「但馬屋珈琲店」で豆の焙煎について知ったことで、より一層コーヒーへの興味が増した大友さん。勤務先ではコーヒーだけでなく調理も経験していたため、開業にあたりカフェにするか、料理中心の店にするか、迷った時期もあったというが、コーヒーに魅力を感じてカフェの開業を決意した。
「『但馬屋珈琲店』に勤めていた当時、自家焙煎のお店が少なかったこともあって、焙煎士という存在や間近で焙煎の様子が見られる環境は珍しく、とても興味深かった。そこからコーヒーへの興味が増してきて、もっと知りたい、もっと学んで技術を身につけたいと、とにかく経験を積んでいきました。『但馬屋珈琲店』で働きながら、プロの技を見たり、仕事が休みの日を利用して焙煎をやらせてもらったり。焙煎機の掃除の仕方から焼き方まで、焙煎の基礎を学べた貴重な期間でした」
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「但馬屋珈琲店」には約2年半勤め、特に焙煎に関して知識と技術を身につけた。そして次はエスプレッソを学びたいと日本橋にあった「赤木屋珈琲」へ。この店は規模が大きく、焙煎機やエスプレッソマシンなど設備が充実。さらに講師が来て指導してくれるなど、手厚いサポート体制でプロの技を教わることができ、多くの知識や技術を学んだ。

また仕事だけでなく、休みの日にはセミナーや焙煎機の製造会社のイベントにも積極的に参加。のめり込むように“コーヒーが学べる場所”に出向いていた。当時を振り返り「あのときはコーヒーに関することがとにかく新鮮でした。遊びに行くような感覚で、コーヒー漬けの日々も苦にならなかったですね」と大友さん。
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「最後に浅草の『FEBRUARY CAFE(フェブラリー カフェ)』、代々木の『FRESCO COFFEE(フレスコ コーヒー)』(※現在は閉業)のダブルワークを経て開業。焙煎や抽出、豆の見極め方をはじめとする一つひとつの知識をお店ごとに得られたので理解もより深まりました。各所で得た技術をもとに自分なりに味が出せているかなと。また調理師学校やイタリアンでの調理の経験も今ではスイーツづくりの基礎として活かせています。どの経験も無駄ではなく、有意義なものだったと思っています」

店は実家のスペースを借りてオープンしたもの。規模は大きめで、席間にゆとりを持たせたくつろぎの空間となっている。中村橋エリアは閑静な住宅街が広がり、周辺には公園や美術館を有する穏やかな街。お一人様、子連れの夫婦など客層は幅広いが、みながコーヒーを通して穏やかな時間を過ごしている。
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自家焙煎のこだわりは豆本来の甘さ、質感を引き出すこと

「プロバット 半熱風式」を使い、豆の焙煎度は浅煎りをメインにしている。半熱風式の特徴として豆が膨らみやすく、「豆本来の甘さを引き出すこと」「豆ごとの質感をしっかりと強調すること」という大友さんが思い描く焼き上がりを実現するのに、この焙煎機が最適だと語る。

豆はシングルオリジンが3〜6種類。ベトナム産以外は豆の産地や種類を定期的に変えるほか、味と価格の両立を考慮しながら常に最もよいラインナップに。ブレンドは1種類で深煎り。シングルの浅煎りとは違う、コク深い味わいを楽しんでみるのもおすすめだ。
「ベトナム産の豆は『ZANYA(ザンヤ)農園』から仕入れています。ベトナム産といえば世界的にもシェア率が高く、慣れ親しんだ味で飲みやすい。コーヒーの2大品種のひとつ・ロブスタ種がメインだったベトナム産の豆ですが、ここ数年はアラビカ種が注目され、『ZANYA農園』の豆もこの品種。なかでも品質がトップクラスで、実際に飲んで見ても雑味がなくすっきり飲みやすいクリーンな印象です。大切にしている豆の甘さもしっかり感じられるので、特にイチオシしています」
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淹れ方でも伝わるコーヒーを楽しむ姿勢

「ハリオV60など3種類のドリッパーを使い分けて抽出しています。当然ながら同じ豆でも器具や淹れ方で違いが出るので、常連さんはいろんな味を楽しんでもらえているかなと。どのドリッパーを使うかは気分次第!そんなことも楽しみながら日々コーヒーと向き合っています」

大友さんとパティシエのスタッフが手がけるスイーツも評判。人気の「バスクチーズケーキ」はなめらかな舌触りの生地から広がる、チーズの濃厚な味わいが印象的。甘さが程よく、特に浅煎りのコーヒーとの相性も抜群だ。

何気なく入ったカフェから開業にいたるまで熱心にコーヒーを学び続けた日々。その原動力は“コーヒーの楽しさ”があったからこそ。店に訪れる人々にも、大友さんの想いがきっと伝わっているはずだ。
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「REINO COFFEE STORE」レコメンドのコーヒーショップは「トイロ珈琲店」
「文京区千駄木にある『トイロ珈琲店』。店主の中村さんはともに開業前に通っていたセミナーで知り合った同士です。2024年オープンですが、すでに評判の高い一店。路地裏にある隠れ家的な喫茶店で、落ち着いた雰囲気のなかで自慢の自家焙煎コーヒー、焼菓子をゆっくり楽しんでください」(大友さん)
【「REINO COFFEE STORE」のコーヒーデータ】
●焙煎機/プロバット 5キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオV60、Kalitaウェーブ)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ リネア)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
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●テイクアウト/あり(S500円〜)
●豆の販売/100グラム970円〜
取材・文/GAKU(のららいと)
撮影/大野博之(FAKE.)
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