
本作は、モーニング月例賞で「期待賞」を受賞した白梅僚人さん(@eiichi_manga)の『同じ顔の女』。整形をして人生が変わった朋美の前に、過去の自分とそっくりな顔の女性が現れる。その女性が自分らしく生きる姿を見て、朋美は「なぜ自分は、彼女のように生きられなかったのだろう?」と、自分自身に問いかける。
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変わったのは容姿だけ?整形した女性が問いかける「なぜ自分を愛せなかったのか」



整形前、容姿のことでいじめられ、自分の見た目が嫌いだった朋美。整形をすると周囲の評価も自己肯定感も上がり、よいことばかりだった。そんなある日、大学で整形前の自分にそっくりな女性、なっちゃんと出会う。いじめの経験から、なっちゃんをつい目で追ってしまう。
この作品は、「容姿」をテーマに、整形して人生が変わった朋美と、自分の容姿を受け入れ人生を謳歌するなっちゃん、2人の女性の生き方を描く。制作のきっかけは、白梅さんが「整形した女の子が主人公のプロットを書いた」ことだった。そこで、「担当編集さんから『整形前の自分と同じ顔の人間が現れたら面白いのでは?』というアドバイスをいただいた」ことで、物語の主軸が決まったという。
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特に「自分の見た目が嫌で整形する女性」の心理描写は、丁寧に描かれている。そこには「自分が経験したことのある苦しみと、このキャラクター(朋美)が持つ苦しみの共通点を探しながら執筆した」と白梅さんは語る。「主人公の『朋美という人間』は実在すると考え、どんな人物かイメージを固めるために色々なことをした。『朋美という人間は本当にこう考えるのか?本当にこの台詞を言うのか?』ということを、描いている間ずっと考えていて、モノローグや台詞に少しでも違和感があれば何度でも描き直した」と制作へのこだわりを明かした。
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「いろんな幸せの形があっていい」作者の願いが届いた瞬間
朋美とは対照的に、「周囲にブスと言われても、自分のことが好き」な、なっちゃんという存在。「このキャラクターは、常に『カッコよく』見えるように気をつけた。好きなものを貫いている人にとても憧れるので、そういう人の魅力を表現したいと思って描いている。なっちゃんは、世間一般的に美しいという価値観から外れているかもしれないが、個人的には常に『ええやん…』と思って描いた」と話す。
「私はどうして自分を大切にできなかったの?」と、朋美が後悔の涙を流すシーンがあるが、結果として「いろんな幸せの形があっていい」などのコメントが届き、12万件の「いいね」がついた。白梅さんは、「Xにこのコメントを最初にいただいた時、『作品を一言で表すとこうなるのか!』と感動した。また、『主人公と似た苦しみを持つ人が、少しでも楽になればよいな』と願いながら描いた作品だったので、『ホッとした』『前向きになった』などのコメントをしてくれた人がいたことは、涙が出るくらいうれしかった」と、大きな反響への感想を述べた。
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この作品は、心理描写だけでなく、どちらの生き方も正しいと背中を押すラストが、容姿や生き方に迷いを持つ人たちの気持ちをアップデートしてくれる。
取材協力:白梅僚人(@eiichi_manga)
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