医食同源ドットコム(iSDG)は、サプリや衛生雑貨で知られるヘルスケア企業。そんな同社が“本場の味をカップで”に挑み、生まれたのが「中華房 麻辣燙(マーラータン)/酸辣燙(スーラータン)」だ。きっかけは、中国出身スタッフ・張さんの“日本でもこの味を”というひと言。

花椒の痺れと八角の香り、そしてサツマイモでん粉を使った春雨の弾力を活かしつつ、社内外の試食で細部を磨き上げた本格派だ。発売はECから始まり、売れ行きは右肩上がり。注文が殺到して一度は欠品したが、再入荷後に復調し、導入店舗は“毎月倍々”のペースで拡大した。さらに2025年6月上旬にはコンビニ展開も始まり、ファミリーマートでの“見つけた”投稿がぐっと増えた。2024年9月の発売開始から約1年となる2025年8月31日時点でのマーラータンの総出荷個数は約155万食にまでのぼる。この“本場直球×健康発想”がどう刺さったのか、医食同源ドットコム マーケティング部 広報課の成田さんにお話を伺った。

サプリの会社がなぜ麻辣燙?“医食同源”から始まった挑戦
ーーまず、御社がどんな会社なのか教えてください。
【成田】弊社はサプリメントからスタートしていて、“医食同源を健康的に日常的に”というところを理念としています。起業当初は、酵素や機能性食品のサプリメントを企画販売してきました。今ではマスクやスニーカークリーナーシートなどの衛生雑貨に加え、今回の「麻辣燙」や「酸辣燙」も支持されています。衛生雑貨から食品まで幅広く事業を展開している会社となっています。
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ーーこれまでで、一番のヒット商品はどれでしょうか?
【成田】「スパンマスク」ですね。マスク市場ではトップ5には入るシェアで、いまだに弊社の売り上げの8割以上を占めています。コロナ禍のあと、全体では多少の落ち込みはあるものの、日常使いとリピートがしっかり支えてくれていて、ガクッとは落ちていません。縫い目の代わりに水圧で生地同士を圧着する製法を採用し、つけ心地にもこだわっています。カラー展開も拡充中で、8月25日には新色のアイスグレーを発売しました。
ーー食品へ挑戦する最初の一歩は、どの商品からでしたか?
【成田】食品カテゴリーの最初は、真空フライスナックシリーズの「しいたけスナック」です。続いて「マッシュルームスナック」も出しました。プロテインやオートミールの販売経験もあり、健康に関する知見を活かしながら食品開発を広げていきました。
ーー「麻辣燙」をカップ麺化する“決め手”は何だったのでしょうか?
【成田】企画・開発部の中国出身スタッフ張の“日本の人たちにも、故郷の中国と変わらない味を食べてほしい”という思いが出発点です。その頃はまだ衛生雑貨が中心で、食品のハードルが高かったのですが、「しいたけスナック」やプロテインで実績ができ、社内の“健康に寄り添う”という方針とも重なって、やるなら“本場の味をそのまま”で行こうとプロジェクトをスタートさせました。
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ーー味のベースになった地域や料理はどちらでしょうか?
【成田】麻辣燙と酸辣燙は、もともと四川省がルーツの痺れる辛さが特徴の四川料理なんです。張も子どもの頃から慣れ親しんできた味で、そのリアルさを日本でも再現することを目指しました。
本場の痺れをそのままに。30回超の試作でたどり着いた味
ーー何人ぐらいで開発されたのですか?
【成田】開発部は3名です。ここに中国本土の協力スタッフが加わる少人数体制で、本場側と手を取り合いながら進めました。2021〜22年に動き出し、試作は30回以上繰り返しました。国をまたいだやり取りなので、一回一回の確認に時間がかかりましたが、味・具材・麺の太さ・弾力・スープの濃さまで細かく詰めています。そして、“この味で製品化できる”という最終版に近づいた段階で、張も試食して“うれしかった”と話していたと聞いています。本場の味だと自分でも思えたそうですよ。
ーー春雨の麺にすることは決まっていたのですか?
【成田】まず即席麺にしたのは、家で簡単に食べてほしかったからです。そして、春雨の麺を採用することは、最初から決めていました。健康会社としての知見を活かしてグルテンフリーのサツマイモでん粉を採用することにしました。
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ーーなぜ、麺にサツマイモでん粉で作った春雨を採用したのですか?
【成田】グルテンフリーで、スープを吸ったあとの弾力と満腹感に優れているからです。じゃがいもでん粉で作った春雨は“もちもち”が強い一方、サツマイモでん粉で作った春雨は“弾力と腹持ち”が光る。実際に食べ比べて相性を見極めました。中国でもポピュラーではないですが、地域によってはサツマイモの春雨が親しまれているそうです。
ーー春雨の太さや戻し時間は、最終的にどのように決められましたか?
【成田】当初は“日本で一般的な春雨の太さ”で始めましたが、スープに負けたり噛み応えが弱かったりと課題が明確に。社内で“この味にこの麺は違う”の声もあり、太さ・戻し時間・弾力を変えて、食べ比べを繰り返しました。スープと麺の関係が噛み合うまで、細部を詰めています。

ーー辛さのタイプについて教えていただけますか?
【成田】“辛い”より“痺れる”。花椒のヒリヒリ、ビリビリが前に出ます。よく“辛ラーメンやカレーの辛さと比べると?”と聞かれますが、まったく別の方向性ですね。
ーースパイス配合のこだわりを教えてください。
【成田】花椒や八角をしっかり利かせると“刺激的な香り”になります。日本人向けに味をマイルドに調整する案もありましたが、本場の味わいをそのまま残すために配合は大胆め。社内でも(意見が)二極化しましたが、最終的に“本場寄り”を選択しています。
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ーーかやくの具材を選ぶ際の決め手は何でしたか?
【成田】かやく(乾燥具材)にするには水分を抜く工程が必要で、向く素材と向かない素材がはっきり分かれます。本場で親しまれているものを取り入れたい一方で、乾燥加工に耐えることも条件。そこで「麻辣燙」は湯葉、「酸辣燙」はエビとたっぷりの海苔を“かやく”として選びました。カップ麺では珍しい組み合わせですが、本場でも親しまれているものです。春雨との食感のコントラストが楽しいですよ。湯葉は中国でも日常的に食べられていると聞いています。

ーー箱型のフタを採用した理由と、使い心地の利点をうかがえますか?
【成田】一般的なカップ麺のフィルムを“ペロッ”と剥がす工程って、地味にストレス。そこを解消するために箱型の蓋にしました。かやくを入れてお湯を注いだら2分。さらっと作れます。出来上がる2〜3分のあいだに席を外して戻ったら、フィルムが“ぺろーん”ってめくれている問題…あるあるですよね(笑)。まさにその小さなストレスを避けたかったのも理由のひとつです。
ーー実際に味わったユーザーからの声で、印象的だったコメントはありますか?
【成田】社外のイベントで「麻辣燙」と「酸辣燙」の試食会を行った際に、中国ご出身のお客様からの声がとても強かったです。中国ご出身のお客様から“日本でこの味なの?”“辛くて本場の味、これは食べてた味だよ”と直接言っていただきました。日本人の方からも“家でこの痺れが再現できるの、すごい”と反応があり、方向性の確信につながりました。
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もっとおいしく、もっと身近に。広がる反応とアレンジ
ーー発売後の動きはいかがでしたか?
【成田】昨年9月、まずECで販売を開始しました。SNSの拡散とメディア露出が重なって、売れ行きはぐんぐん上向きました。ところが注文が集中し、いったん欠品してしまったことも。それでも再入荷後はスッと持ち直し、ECではケース(12個)買いのご注文が目立つようになっています。6月上旬からはコンビニでの取り扱いも始まり、特にファミリーマートさんでの“見つけた”投稿がどんどん増えました。そこから導入店舗は毎月のように倍々で広がり、接点は一気に拡大しています。
ーー価格と“買っている人の広がり”について、現在の手応えはいかがでしょうか?
【成田】店舗の麻辣燙は1000円前後することも多いですが、「中華房 麻辣燙」は267円。専門店が近くにない地域の方にも届きやすい価格帯です。SNSを見ると10〜20代からの反応が特に活発で、TikTokの拡散に加えて著名人の投稿も相まって認知がぐんぐん広がっています。さらに“お店で食べて気に入って、コンビニでカップ版を見つけて試してみた”という投稿も多く、人気の広がりに一役買っています。
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ーーSNSでの広がりは、取り扱い店舗の拡大にどの程度影響しましたか?
【成田】効きました。消費者の“リアルな声”があと押しになって、コンビニ・スーパーの導入店舗数が毎月倍々で増加。ありがたいことに“切らさない”が現在の合言葉です。

ーー想定していたお客さまと、実際の購買層の違いをどう見ていますか?
【成田】弊社ECは40〜60代女性の比率が高めなので、当初はECと同じ購買層の方を想定していました。ただSNSやコンビニのおかげで10〜20代にも広がり、家の近くのドンキで“箱買い”という報告も多く、回転の速さにこちらが驚く場面もあります。
ーー“これ一杯で満足”のために、どのような工夫を盛り込みましたか?
【成田】麺だけで50グラム以上。カップ麺って、一緒におにぎりやパンを食べる人も多いですよね。でも、この「麻辣燙」と「酸辣燙」はボリュームがあるので、これ一杯で満足できます。個袋構成なので、辛さの液体や粉末の量を自分で調整できるのもポイント。線より少なめにお湯を入れて濃いめに仕上げ、“追い辛”でビリッと持っていく上級者もいらっしゃいます。春雨が戻る“ギリギリの湯量”を攻める方もいらっしゃって、自由に楽しんでいただいています。
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ーーおすすめの食べ方や、よく伺うアレンジをいくつかご紹介いただけますか?
【成田】夏はクーラーを効かせて汗だくになりながら、冬は体を中からポカポカに温めながら楽しんでいただいています。夜食やストレス発散にも“がつん”と刺さるようで、“夜中でも罪悪感が少ない”との声もあります。防災ストックに入れておきたいという方も増えています。
ーーお客さんの声で、うれしかったものを教えてください。また、改善してほしいリクエストが届くこともありますか?
【成田】“自宅でこのクオリティの本格中華”“痺れ感がリアル”など。八角が苦手という声も正直にいただきますが、それも含めて“本場に振り切った”結果だと受け止めています。
ーーアレンジで人気のもの、意外だったものは?
【成田】社内で盛り上がったのは、豆乳・牛乳・チーズ・冷凍水餃子など身近な食材アレンジ。中国ではナッツを入れる文化もあるので、ピーナッツ系にもトライしました。ただ実際は“ピーナッツそのものを入れればよかった”のに、うっかり“ピーナッツバター”を入れてしまい、正直合いませんでした(汗)。甘い系だと、チョコレートを試した人もいましたが、こちらもそのままでは相性が出ず、“甘味は調整が必要”という結論でした。一方で“納豆オン”するという驚愕のアイデアもありました。これには社内でも賛否が真っ二つ。実際に私も試してみて、正直びっくりしました。私はご飯派ですが、ハマる人はハマる。最近のプチ流行は“麻辣燙×酸辣燙を1:1でブレンド”。酸っぱ辛くて、具材の風味が一気に楽しめます。
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ーー現在の主な販売場所と、今後の広がりについて教えてください。
【成田】ファミリーマートさんでの発見報告が多いです。10月頃からは、本格的な全国展開を予定しています(時期の詳細は順次公式でお知らせします)。
ーー今後どのような新商品を予定されていますか?
【成田】“混ぜ麺”タイプの「麺ピー」が9月1日にECで先行発売されました。中国ではとてもポピュラーな麺料理で、作り方はかんたん。お湯を注いで湯切りし、仕上げに液体をぐるっと絡めるだけでOKです。小麦にもこだわっていて、噛むたびにコシが心地よい仕上がり。しかもノンフライです。パッケージの目安は“3分”ですが、4〜5分と少し長めに置いたり、湯量を控えめにしたりすると“自分好みの食感”に近づきます。量感としては、既存カップと比べて「麺ピー」のほうが少し大きいのもポイントです。

ーー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
【成田】本場の味を、手軽に、安全に、おいしく。「麻辣燙」と「酸辣燙」、そして新作の「麺ピー」まで、皆さんの“マイ麻辣燙”を自由に楽しんでください。辛さや具材は個袋で調整できます。ぜひ、自分好みの一杯を見つけてもらえたらうれしいです。
ーーありがとうございました。
花椒がじわりと広がり、八角の香りがふわっと立つ本場の痺れ。本場に遜色ないと中国出身の張さんも太鼓判を押した味だ。もし店頭で出合ったら、まずは手に取ってみよう。熱々を、ふうふう味わえば、痺れと辛さの虜になるはず!
取材・文・撮影=北村康行
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