隣人のいびきがうるさくて眠れない。深夜2時に鼻歌が聞こえて目が覚めた。顔も知らぬ隣人は、夜型の漫画家と朝型の教師。生活リズムの違う二人が壁の薄い賃貸物件に暮らし騒音問題から巻き起こる不思議な縁を描いた、なかの(@nakanocchi_Ex)さんの『パーソンズ・ネクスト・ドア』を紹介するとともに制作秘話を聞いた。
【壁ドン!】壁が薄いアパートでは、いびきも声も全部筒抜け!?生活リズムが違う隣人同士「やめてくれ!」騒音問題で起きるトラブル【インタビュー】

いびきも声も全部筒抜け!描いた漫画が掲載されないと怒る漫画家の苦悩を知って?
壁の薄い賃貸物件に暮らすのは、教師と漫画家。深夜2時、「よっしゃー!脱稿!」とメールを送る漫画家。鼻歌を歌いながらご飯を作っていると、壁がドン!と叩かれる。「そういえば夜だった…」と気づくが、夜型の漫画家のせいで隣人は目が覚めてしまう。
朝方になって漫画家は就寝。しかし、壁の向こう側からクマの唸るような音がする。よく聞くと隣人のいびき。漫画家は2日間寝ていないので猛烈に眠い。しかし、いびきのせいで眠れない。壁をドン!と叩くと、静かになった。隣人は超朝型の教師。壁ドン!のおかげで目が覚め、遅刻を免れた。
生活リズムの違う2人は、こうして壁を叩いては「うるさい!」を繰り返していた。そんなある夜、自宅に帰ると隣から「はあ!?あんまりだろ?」と叫ぶ声がする。教師はご飯を食べながら、「めっちゃ暴れてる…別れ話かな」と想像。電話で口論しながら落ち込んでいく隣人の声を聞いて「何か私にできることは…」と考えはじめた。
「登場人物は2人だけ」という縛りのおかげで「隣人との騒音トラブル」という設定が生まれた
――『パーソンズ・ネクスト・ドア』の制作のきっかけを教えてください。
もともとは「登場人物は2人だけ」という縛りのある漫画賞に投稿するために制作したものです。2人だけだと会話劇になってしまいがちでそれを避けようと考えたところ、漫才やコントを参考にすることを思いつきました。その中で「隣人との騒音トラブル」をテーマにしたコントを見て、「そういえば隣に住んでる人の顔を見たことがない、顔を見ずに終えるのはどうか」と思い、こんな漫画になりました。
――壁の薄い賃貸物件で巻き起こる騒音問題から始まって、その後の展開がとてもおもしろかったです。制作するうえでこだわったところがあれば教えてください。
「とにかく最後まで顔を合わせないこと」にこだわりました。なので、どうコミュニケーションをとらせるのか?話が地味になりがちなので、どう話のテンションを上げていくのか?が課題でした。正直、意外性をもたせようという意識はあまりなかったです。ずっと肩の力を抜いて考えていました。
――朝型の生活を送る教師と夜型の漫画家という対照的な2人が生まれたきっかけを教えてください。
締め切りまで時間がなく、他の仕事を掘り下げる余裕がなかったので、自分にとって身近な職業を取り上げました。本業は教員なのですが、こんな感じで超朝型です。新人の頃、異動について悩んだ時のことを彼女の葛藤に落とし込みました。漫画家の方は、当初小説家のつもりで描いていたのですが...、気づいたらこうなってました。この2人は「私自身」を投影したキャラになっていると読んでくれた友人に言われました。ちょっと恥ずかしいですが(笑)。
――2人が隣人のままという設定もよかったです。なかのさんが描くうえでこだわったところがあれば教えてください。
2人が顔を合わせて仲良くなるラストは全く考えていませんでした。この漫画で描かれたものは、人生の一部を切り取っただけで通過点にすぎない、たまたま隣同士だったご縁。わざわざ友人や恋人になる必要はないだろうと考えたからです。
あとは何かしら余韻を残すことです。最後のランデブーシーンはいらないと言えばいらないですが、あえて差し込みました。最近はあまりしていませんでしたが、マグネットやトラックの絵など、細かいところで遊んでいました。「理屈よりも、自分がのびのび描けるかどうか」を全体通して重視しました。
――そのほかにどのような漫画を描いていますか?
今回はたまたま大人が主役だったんですが、ティーンエイジャーが葛藤する漫画が多いです。仕事柄、そのくらいの年頃の子どもと関わるのが多いからかと思います。女性向けもごく稀に描きますが、なぜか女主人公だと明るくてうるさい子ばかりになります。
取材協力:なかの(@nakanocchi_Ex)
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