右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をわかりやすくコミカルな漫画で描いてきたキクチさん(kkc_ayn)。なかでも、母親の自宅介護と看取りがテーマのコミックエッセイ「20代、親を看取る。」では、自宅介護の現実や、“親との死別”と向き合う中で複雑に揺れ動く感情が描かれており、同じ経験がある人や親の老いを感じ始めている同世代などから大きな反響を集めた。
コミックエッセイ「父が全裸で倒れてた。」は、母を看取ってから約2年後、今度は父が病に倒れてしまう話だ。母の介護・看取りを経たことで落ち着いて対応できることは増えたものの、あのときとは違い、一人っ子として頼れる家族がいない中でさまざま決断を迫られることになるキクチさん。いつかは誰もが直面する“親の老いと死”についてお届けする。
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今回は、コミュニケーションが取れるようになった父とのエピソードをご紹介。






容態が安定した父に差し入れを持っていくも、今度は隣室でコロナ…!?
インフルエンザから復活した作者のキクチさんが久しぶりに父のお見舞いに行こうとしていると、なんと父親からLINEで連絡が!つい先日までICUにおり、まともにコミュニケーションを取れなかったはずの父親から急にLINEが来た時は驚いただろう。
「めちゃくちゃ驚きました。父とのLINEは父が倒れる数日前から止まっていたので2ヶ月弱ぶりです。まさか動けるようになっているとは思わなかったので、父から通知が来たときは『看護師さんが代わりに連絡してくれたのかな?』と思っていました。でも開封してみたら、父と思わざるを得ないほどの長文LINE……(笑)。看護師さんじゃないことは、読まずともわかりました」
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病室に着いて父親と直接話してみると、やはりしっかりと意思疎通ができる状況。それどころかタブレットで映画を見たがったり、“とにかく生きてほしい”と願った少し前に比べてかなり状況は好転していように見える。
「倒れてすぐにICUに運ばれたときは、管と機械に囲まれて『生かされている』という感想を抱きましたが、やっと『生きている』状態になって安堵しました。以前は水分補給だって、腎臓が悪すぎるから1日に決まった時間・少量しか飲めないように管理されていたのに、いつの間にか自分の意思で好きな量を飲めるようになっている。せん妄で水を飲ませろと叫んでいたこともあったので、それを思い出すと『本当に良かったね』という気持ちでいっぱいでした」
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着脱しやすい前開きタイプの病院着を買うなど、オムツ以外のものを届けられる喜びを噛みしめる作者だったが…今度は父親の隣室でコロナが発生。父は隔離病棟に移され、面会禁止となってしまった。
「母の介護を経験していたので、衣服において処置のしやすさと着心地の良さは大事だと身をもって経験していました。その視点で捜索し、口コミで高評価なものを購入。父はマインドが江戸っ子なので、伝統的な和柄模様が施されたものを選びましたが、気に入ってくれたようです。その後、隣室がコロナ感染と聞いたときは『あの人面会者多かったもんな……(笑)』とちょっと納得。とは言え正直『勘弁してくれよ〜』という気持ちにはなりました」
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自身がインフルエンザから復活したと思ったら、今度は父親の隣室でコロナが発生してしまった今回のエピソード。つらい状況も淡々と、時にクスリと笑える場面を挟みながら描くキクチさんの漫画を、今後も楽しみにしてほしい。
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