「なんでも持ってる人間が偉そうに」憧れの裏にある嫉妬心が爆発
映画の中のある少女の演技に惹かれた高校生の「中山優子」。新学期、新しいクラスで隣の席になったのが、映画の中の俳優「アリス」こと「牧野花」だった。映画を愛する共通点を持った二人は、クラスメイトとして瞬く間に親しい友人同士になった。
優子は、家では抑圧的な母にさいなまれ、スクリーンの向こう側で別人になり切る「アリス」の強さと、俳優というあり方に憧れを持つ反面、弱い自分に引け目を感じていた。
だが、ある言葉がきっかけで、優子は彼女に対する劣等感と嫉妬を抱えていたことを自覚してしまう。
そして、その感情が思い違いであったことを、優子は花の突然の転校で知ることになる。最後に会った日、「自分の夢は自分で守ってあげたいじゃん」と困ったように笑うかけがえない友人の姿を思い出し、優子は涙とともに、ある決意を固める――。
作者の東洋トタンさんは、昔から映画が大好きで、一度映画を題材にしてみようと挑戦した作品が本作だという。映画を観ていると、いい演技をする無名の俳優さんの存在に惹かれる事があり、本作のメインキャラである花 / アリスの着想はそこから得たとのこと。
この作品において「アリスは“強さ”、優子は“弱さ”を担っています」と語る東洋さん。「一切弱みを見せなかった花は優子にとって、ずっとスクリーンの向こう側の“アリス”だったのだと思います。優子の妄想ですが、花が映画のスクリーンから優子に話しかけ、優子が思わず手を出すことで冒頭に観た映画の内容とリンクする…、というシーンはこだわった点の一つです」と見どころを話してくれた。
少女たちの出会いと別れの物語。ぜひ読んでみてほしい。
取材協力:東洋トタン(@To_Yo_Tutan)